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第46話

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「カサンドラは可愛らしい見た目に似合わず気の強い少女だった。私はよく馬鹿にされてね。
『もっとはっきりしなさいよ!』と尻を叩かれる事も多かった。だが、彼女はその後いつもこう言うんだ『だから私が貴方の側に居てあげる』とね。
彼女と居れば、私は強くなれた気がしていた。……が勘違いだったよ。彼女が居ないと私は結局、優柔不断でウジウジした男のままだった。国を捨てると言った彼女を信じられずに、周りの言いなりになり、他の女と結婚しようとした。カサンドラの性格を知っていたのにな……彼女はいつも有言実行だった」

陛下の目が赤い。潤んだ瞳から涙が溢れる事は無かったが、私には陛下が泣いている様に見えた。

「国を捨てて王女じゃなくなったカサンドラ様との結婚は、どちらにしても反対されたのではないですか?」
私の問いに、陛下は自嘲気味に笑う。

「私には結局……国を捨てる勇気もなかった。カサンドラを救う事すら……きっと出来なかっただろうな。
お前の言う通り。結果は同じ。私はカサンドラを永遠に失う事に変わりは無かっただろう。それからだ……私は自分で考える事、決断する事を諦めた。私が何かした所で、誰かを傷つけるだけだ。それなら、周りの意見に流されながら、事を荒立てない様にするのが得策だと思うようになった。……それが今のこの国の現状を招く事になったのだが。……皮肉なものだ。平穏に過ごせれば良いと思っていたのにこのザマだ。国は混乱の一途を辿っている。全て私の責任だ」

私は立ち上がり、陛下の隣に移動して腰掛けた。

「私には陛下も傷ついているように見えます」

「私の傷など………。私は生きているだけで、皆を傷付ける。カサンドラからは命を。ベイカー公爵から婚約者を奪い、メリッサからは公爵との未来を奪った。そしてこの国も……この内乱で何人もの若者が亡くなった。だから……私に出来る事はメリッサの命だけは助けたいというベイカー公爵の願いを聞き入れる事だけだった」

これから、私がどうしてここに居るのかの理由が語られる様だ。私は思わず座り直した。

「ベイカー公爵は何と?」

「ある日、あの男は非公式に私の元を訪れた。『万が一、王国軍が負ける事になればメリッサの命が危ない。どうにかしてメリッサを助けたい』と彼は言った。私としてはそのままメリッサとの離縁も考えたが……メリッサは世間からの評判が悪い。王族でなくなる事は彼女にとっても痛手だった。
それにこの状況で王族から抜けるとなると……ますます風当たりは強くなっただろうし、議会も黙ってはいない。そこで私は条件を付けた。『替え玉を探してこい』とな」

なるほど。やはり私が此処に来た理由はメリッサ様の代わりに処刑される為の身代わりだった様だ。分かっていた。分かっていたが、やはりその事実にやるせない気持ちに襲われた。
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