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第40話

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私は宣言通り、自由に過ごす事にした。
もちろん目立つ事はしたくないし、食事のマナーは全く分からないから、部屋で食事を摂るのも変わらないが……

「散歩ですか?」

「ええ。部屋に閉じ籠もってばかりでは体が鈍るし。それに陽の光を浴びないと、骨が弱るのよ?」
私の要望にマギーが嫌な顔をする。しかし、そんな事は無視だ。

「マギーは別に付いてこなくて良いわ。どうせ護衛が付いて来るのでしょう?」

「いいえ。貴女を一人にするわけには参りません」

「だから。護衛が居るのだから、一人ではないわ」
私はそう言い捨てると、扉の方へとツカツカ歩いて行く。
マギーはその前に立ちはだかる様に、私と扉の間に急いで入った。

「勝手は許しません」

「どうして?」

「貴女が偽物だと分かれば、メリッサ様を捜索されるかもしれません。今はまだバレる訳にはいかないのです」

『今はまだ』ね。じゃあいつならいいのかしら?

「王妃って散歩すらしなかったの?」
私か尋ねると、マギーは下唇を噛み締めて俯いた。

「顔に『散歩はしてた』って書いてあるわ。じゃあ、問題ないわね」

私がマギーにそう言うと、彼女は悔しそうな顔で扉の前を譲った。


私は少し勝ち誇った気分で扉を開ける。そこにはノアともう一人の護衛がいた。

「妃陛下、どちらへ?」

「庭を散歩したいの。せっかくのお天気だし」

「畏まりました」
ノアはニヤッと笑うと先に歩き始めた私の後を付いてくる。そして、もう一人の護衛には聞こえない程の小声で、

「庭の場所、分かってるのかよ」
と私の耳元で囁いた。私も同じぐらいの小声で、

「わかるわけないでしょ。先導しなさいよ」
と答えた。ノアは少し笑いを堪える様に肩を震わせながら、黙って私の前を歩き始めた。


「凄い!」
思わず見事な花を咲かせる庭に感嘆の声を漏らす。

花屋の店先よりも立派な花が咲き乱れる庭は、たっぷりの日差しを浴びてキラキラと輝いてみえた。

「ねぇ、これは何て言うお花?」
私は水やりをしていた庭師へと声を掛ける。
私に声を掛けられた庭師はギョッとした表情で私を見ると、急いで被っていた帽子を脱いで、頭を深々と下げた。

「ひ、妃陛下……そ、そちらはダリアでございます」
庭師の声が震えている。緊張しているのかしら?

「へぇ~可愛い花ね。色も鮮やか」

食堂で働いている時は花を愛でるような心の余裕なんて無かった。花を贈ってくれるような男性も居なかったし。

「は、はい!その通りでございます」
庭師は頭を下げたまま、まだ声を震わせていた。

すると、ノアがまた私の耳元で

「顔を上げる許可を。じゃなきゃ、庭師はこのままだ」
と囁いた。

なるほど。顔を上げるにも許可が必要とは。なんとも面倒くさい仕来りだ。
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