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scene・27
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「だって……」
と彼女は少し俯いた。
「えっと。澄海がグループに誘われている事も、私は今知ったぐらいだから邪魔しているつもりはないわ。……私だって澄海には活動者として頑張って欲しいと思ってるし応援もしてる。だけどそれは澄海の気持ちを尊重しなきゃ……」
と私が言えば、
「じ、じゃあ!澄海がその気になる様に説得して!澄海は本当に才能があると思うの!もっともっと伸びてもおかしくない人なの!」
と必死な顔で彼女は私の腕を掴んだ。
……この子も私と同じ様に澄海の奥底に眠る形容し難い才能に気づいている1人なのだろう。そしてモントリヒトのリーダーとやらも。
「説得って言われても……。澄海に相談もされていないのよ?それなのに私が口出しするのも…」
と私が躊躇うと、
「……結局、あなたも澄海の才能をダメにする気?」
と彼女は私を睨んだ。
「あなたも…って?」
「澄海の母親も……澄海を自由にさせてくれなかった。だから澄海は……」
と彼女はまた俯いた。
澄海が家族と不和な事は知っていたが、私からはあえて聞き出す事はしていなかった。彼が話したい時に話せば良いと思っていたからだ。
そして、澄海の過去を彼女の口から聞く事も、なんだかそれはそれで狡い気がする。
「私は澄海とは単なる同居人。澄海がやりたい事を邪魔するつもりもないし、かといって相談されてもいないことにお節介を焼くつもりもない。澄海だって、そんな大切な話を私が貴女から聞いたと知れば、良い気はしないでしょう?きっと彼は貴女を信頼しているから、その話をしたんでしょう?それを私にペラペラと話した事が分かれば、貴女も彼からの信用を失くすわよ?」
私はそう言いながら、少しだけ胸の痛みを感じていた。あぁ、この子には話せて私には話せない事なのだと。私はそんなに信用されていないのかと思うと、また胸がモヤモヤした。
彼女は私の言葉を聞いて顔を上げた、そして何かを言いかけたが……
「ごめんなさい。もうお昼休み終わっちゃう。そろそろ会社に戻らなきゃ」
と私はゴミをビニール袋に入れて口を閉じた。ベンチから立ち上がりながら、
「澄海がもし……その事を私に相談してくれる時がきたら、その時には少し背中を押してみるわ。それで良いかしら?」
と私はベンチに座ったままの彼女にそう言った。
「じゃあ」
と彼女に背を向けた私に、
「別に澄海に直接相談された訳じゃないの。私……モントリヒトのリーダーに頼まれて澄海を呼び出して。その場に私も一緒に居たってだけ」
と彼女もベンチから立ち上がりながら、そう声を掛けてきた。
私は振り返り、
「……それでも、貴女が彼にもっと大きくなって欲しいって思ってるから、わざわざ私に会いに来たんでしょう?その気持ちは本物だもの」
と彼女に言って、また前を向いて会社の方へと歩き出した。少し早足じゃなければ、昼休みが終わってしまうだろう。
私は何故か心が少し軽くなったように感じながら、会社へと急いだのだった。
と彼女は少し俯いた。
「えっと。澄海がグループに誘われている事も、私は今知ったぐらいだから邪魔しているつもりはないわ。……私だって澄海には活動者として頑張って欲しいと思ってるし応援もしてる。だけどそれは澄海の気持ちを尊重しなきゃ……」
と私が言えば、
「じ、じゃあ!澄海がその気になる様に説得して!澄海は本当に才能があると思うの!もっともっと伸びてもおかしくない人なの!」
と必死な顔で彼女は私の腕を掴んだ。
……この子も私と同じ様に澄海の奥底に眠る形容し難い才能に気づいている1人なのだろう。そしてモントリヒトのリーダーとやらも。
「説得って言われても……。澄海に相談もされていないのよ?それなのに私が口出しするのも…」
と私が躊躇うと、
「……結局、あなたも澄海の才能をダメにする気?」
と彼女は私を睨んだ。
「あなたも…って?」
「澄海の母親も……澄海を自由にさせてくれなかった。だから澄海は……」
と彼女はまた俯いた。
澄海が家族と不和な事は知っていたが、私からはあえて聞き出す事はしていなかった。彼が話したい時に話せば良いと思っていたからだ。
そして、澄海の過去を彼女の口から聞く事も、なんだかそれはそれで狡い気がする。
「私は澄海とは単なる同居人。澄海がやりたい事を邪魔するつもりもないし、かといって相談されてもいないことにお節介を焼くつもりもない。澄海だって、そんな大切な話を私が貴女から聞いたと知れば、良い気はしないでしょう?きっと彼は貴女を信頼しているから、その話をしたんでしょう?それを私にペラペラと話した事が分かれば、貴女も彼からの信用を失くすわよ?」
私はそう言いながら、少しだけ胸の痛みを感じていた。あぁ、この子には話せて私には話せない事なのだと。私はそんなに信用されていないのかと思うと、また胸がモヤモヤした。
彼女は私の言葉を聞いて顔を上げた、そして何かを言いかけたが……
「ごめんなさい。もうお昼休み終わっちゃう。そろそろ会社に戻らなきゃ」
と私はゴミをビニール袋に入れて口を閉じた。ベンチから立ち上がりながら、
「澄海がもし……その事を私に相談してくれる時がきたら、その時には少し背中を押してみるわ。それで良いかしら?」
と私はベンチに座ったままの彼女にそう言った。
「じゃあ」
と彼女に背を向けた私に、
「別に澄海に直接相談された訳じゃないの。私……モントリヒトのリーダーに頼まれて澄海を呼び出して。その場に私も一緒に居たってだけ」
と彼女もベンチから立ち上がりながら、そう声を掛けてきた。
私は振り返り、
「……それでも、貴女が彼にもっと大きくなって欲しいって思ってるから、わざわざ私に会いに来たんでしょう?その気持ちは本物だもの」
と彼女に言って、また前を向いて会社の方へと歩き出した。少し早足じゃなければ、昼休みが終わってしまうだろう。
私は何故か心が少し軽くなったように感じながら、会社へと急いだのだった。
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