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scene・14
しおりを挟む「ただいま~」
「おかえりなさい。あれ?酔ってる?」
「うーん。酔ってるかなぁ?わかんないけど、気分は良いね」
舞との食事会は良い気分転換になった。
最高に良い気分。
ちょっとフワフワしている自分が心地良い。
「ご機嫌だね。なんか酔ってるお姉さんって、珍しいかも」
私は殆んど家ではお酒を飲まない。飲めない訳ではないけど、わざわざ買って飲む程ではない。
ただ、大好きな人と飲むお酒は好きだ。
私は着替えもせずに、ダイニングの椅子に座った。
私の前にそっと水の入ったコップが置かれる。
こんな時にふと、あぁ私、1人じゃないんだな…って思うのだ。
「何ニヤニヤしてるの?」
「え?ニヤニヤしてる?私」
「うん。…楽しかったんだね。食事会」
私のニヤニヤの理由は…多分今感じた、ささやかな幸せの方なんだろうけど、私は、
「そうね。1年ぶりの再会だったからね」
と舞を理由にした。
本当の理由は内緒だ。
「海外に赴任してるんだっけ?」
「そうそう。3日後にはもう日本を立つらしいけど」
「へぇ。忙しいんだ」
「大手だからねぇ。でも、うちの会社でもあるよ?海外赴任」
そう私が言えば、向かいに座った澄海は、
「え?!じゃあ…お姉さんにも…可能性あるの?海外赴任の」
と驚いた様に言う。
「あ~ないない。私、そんなに語学に自信ないもん。日常会話がやっとだし」
と私が手をヒラヒラさせれば、
「……そっか」
と彼は呟いた。
「心配しなくても、君が自立するまでは此処に居ていいから!
それまで、私は海外赴任も転勤もしない!安心しなさい!」
と私は椅子から立ち上がり、澄海の肩をポンポンと叩いた。
「さぁて…と。もうお風呂に入って寝るわ!お水ありがとう」
と私は洗面所に向かって歩いていく。
その私の背中に、
「そんなんじゃないけどな」
っていう彼の呟きが聞こえた気がした。…多分気のせい。
休日はとりあえず掃除に時間を費やす。
掃除機をかけ終わり、換気の為に開けていた窓を閉める。
「天気いいなぁ~。どっか行こうかな」
一人暮らしが長くなったせいで独り言が多くなった。
「え?どっか行くの?俺も行く!」
私の後ろから声が聞こえた。
私は驚いて振り返り、
「え?もう起きたの?ごめん、掃除機の音うるさかった?」
と私は澄海に謝る。
「ううん。その前に起きていた。ねぇ、どこ行く?俺も連れてって」
と彼は私の横に並んで嬉しそうに微笑んだ。
うかうか独り言も言えない。
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