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scene・3

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お腹空いたな…。彼は…夕飯食べたのかな?

私は冷蔵庫を覗く。大したもの入ってないや…。
コンビニでついでに何か買ってくれば良かった。下着で頭が一杯だった事が悔やまれる。


とりあえずパスタがある…トマト缶もあるな。ニンニク…チップならあるか…何とかなるかな。

私はキッチンに立ち料理を始める。



髪を乾かした彼が、リビングに戻って来た。

「いい匂い」
と鼻をスンスンさせながら、私の手元を覗く。

「ごめん、大した物なくてこんなのしか作れないけど」
と私は出来上がった具なしのトマトパスタを皿に盛って、

「そこのテーブルで食べよう」
とダイニングのテーブルを顎で指す。

行儀は悪いが、両手に皿を持っているので勘弁して欲しい。

彼はいそいそとダイニングテーブルの椅子に腰掛けて、目をキラキラさせた。

「どうぞ」
と私が目の前に皿とフォークを置くと、嬉しそうにパスタを頬張り、

「美味しい!」
と笑顔で言った。

…可愛いじゃないか。犬みたいで。

その様子に、

「お腹、空いてたの?」
と私は訊ねる。
なかなかに早いスピードで食べ進めてた彼は顔を上げると、

「うん。お金なくて」
と答えた。

「スマホは?」

「持ってる。でも充電切れてる」
と言って彼は真っ暗な画面のスマホをテーブルの上に置いた。

私もパスタを食べながら、

「他に持ち物は?」
と質問を続けた。

「何にも持ってない。俺、自分で買った物、なかったから…このスマホだけ」

彼の答えに私は不安になる。まさか…

「ねぇ、君って…未成年じゃないよね?」
ここで『そうだよ』と答えられた場合、私の立場は非常に不味い事になる。

『誘拐犯』そんな言葉が私の脳裏に浮かんだその時、

「君…じゃなくて『澄海』だよ」
と彼が言った。

すかい?…すかい…すかい…あ!名前か!

彼の言葉が彼自身の名前を表すのだと気づくまでにたっぶり10秒程かかってしまった。

ってか『すかい』…って。結構キラッキラとした名前よね?
ますます、未成年の可能性が上がったのでは?

「『澄海くん』ね。OK。…で、年齢は?」
と私は再度彼に聞き返した。そこが重要なんですけど。

もし未成年なら、パスタを食べ終わった後に警察へ行こう。
誘拐犯にはなりたくない。未成年を保護しただけだ。私は悪くない。
私が頭の中で、猛スピードで今後の事をシュミレーションしていると、

「俺は20歳。未成年じゃないよ」
と彼はヘラッと笑った。

「20歳…若いね。まぁ、見たままだけど」

私はホッと息をつく。犯罪者にはならずに済んだようだ。
…彼の話を信用するならば…という事だが。

でも…今どきの若者にしては…あんまりチャラチャラしてないかな?
髪は黒髪だし、ピアス…も着けてない。
背が高いせいか少し猫背なのが気になるくらいか。

「じゃあ、澄海くん…君の実家は?」

尋問しているようで申し訳ないが、咄嗟に放っておけなかっとはいえ、勢いで連れて帰って、ジワジワと後悔している最中なのだ。
…こんな事を自分がするとは思っても見なかった。

はっきり言って32年生きてきて、こんな衝動的な行動を取ったのは初めてだ。
自分で自分に戸惑っている。

「実家…あるよ」

あるだろうね。多分。私が聞きたいのはそうじゃないけど。
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