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scene・2
しおりを挟む「おじゃましま~す」
私が手渡したタオルで頭を拭きながら彼は靴を脱ぐ。
「ちょっと待って!靴下脱いで!あ~もうやっぱりタオルで拭くだけじゃダメね。
…お風呂沸かす時間ないから、シャワーで良い?ほらそのまま、こっち!こっちの洗面所に来て!」
私はシャワーの使い方をレクチャーして扉を閉める。
「ちゃんと温まってね!」
と声を掛ける事は忘れない。
さて…シャワーの水音が聞こえてきた。
っと…着替え…。考えてなかった。
私は急いで近くのコンビニまで走る。
…いや、私…なんでこんな事してるんだろ。自分でも訳がわからない。
とりあえず下着だけは買ってきた。
走った…何年振り?
息がきれる…。アラサーには厳しい。
部屋に戻り、洗面所の扉の側で聞き耳を立てる。……大丈夫、まだシャワーの音が聞こえてる。
私は急いで脱衣場のバスタオルの上に買ってきた下着を乗せる。
着替えは、私の持っている服の中で1番大きそうなロンTとジャージのズボンを引っ張り出して置いた。
何てったって彼は手ぶらだった。何にも持っている気配はない。
多分持っていてもスマホぐらいなもんだろう。
明日、彼の洋服を買いに行かなきゃな…と考えながら、ふと我に返る。
え?私、彼を明日も家に置いとくつもり?
自分の考えに私は自分で驚いた。
じっとリビングで立ち尽くしていた私に、
「あ、あの…お姉さん?大丈夫?」
と彼が声を掛けてきた。
私はその声に反応する。
「え?あ、あぁ。ごめん。ちょっとボーッとしちゃってて。あ~やっぱり小さかったよねぇ」
私の1番大きなTシャツは彼には小さすぎたようだ。ジャージはパツパツで寸足らず。
「いや、突然来た俺が悪いし…。シャワーありがとうございました」
ペコリと頭を下げた彼の髪はまだ濡れている。
「髪の毛、ちゃんと乾かさなきゃ風邪ひくよ?春って言っても、今日は天気悪くて少し肌寒いし」
と言って私は彼の背を押して、洗面所へともう1度連れて行った。
ドライヤーのスイッチを入れて手渡す。
彼が髪を乾かしている間に私もさっさと着替えを済ませる。
肩の辺りが濡れたジャケットをハンガーに掛ける。
こんな時、女子力の高い女の子なら、可愛い部屋着を着るのかな?なんて考えてみる。
残念ながら、色恋から遠ざかっているアラサーには機能性重視の物しかない。
いや、だからと言って可愛い部屋着を買う予定はないのだけど。
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