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第110話

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「まぁ!バルト公爵夫妻じゃ御座いませんか!この前頂いたお菓子、本当に美味しくて!どちらのお店でお買い求めに?」

「こんばんは、アメリア様。この前はとても楽しく過ごさせていただきましたわ。またお話いたしましょうね」

「バルト公爵!いや~この時計、公爵の発明品だとお聞きしましたよ。こんな便利な物を発明されてるとは…本当に素晴らしい」

私と旦那様はロックハート公爵の夜会に出席し、妊婦の私を旦那様は椅子に座らせた。
すると、たくさんの出席者に私達は囲まれてしまったのだ。

最近の私の『旦那様イメージアップ大作戦』が功を奏したのか、私はたくさんの人と交流を持てるようになっていた。

私はそれに慣れてきていたのだが、旦那様は目を白黒させている。

皆さんと一通り挨拶を済ませ、ホッと一息をつく。
旦那様は私に飲み物を持って来て手渡す。

「アメリア…これは…」
と戸惑いを隠せずに私に訊ねようとしたその時、

「アメリア様、今夜は出席ありがとう。それにバルト公爵も。貴方が夜会に顔を出すなんて…明日は嵐かしらね?」
とロックハート公爵夫妻が私達の元へと近付いて来た。

私が挨拶の為に立ち上がろうとすると、

「あぁ、座ったままでいいのよ。大事な時でしょう?無理しないでね」
と優しくロックハート夫人は笑った。

「おめでただってね。バルト公爵も楽しみだろう?アハハハ!」

とロックハート公爵が旦那様の肩をバシンと叩くと大声で笑った。

初めて見たロックハート公爵は…熊みたいな人だった。

力も強そうだけど、旦那様、大丈夫かしら?


「今夜はご招待ありがとうございます」
と旦那様は叩かれた肩を少し擦りながら、挨拶した。

ロックハート公爵は真面目な顔になると、

「君は若いのに本当に素晴らしい。この国に無くてはならない存在だ。
そんな君が今までぞんざいに扱われていたとは…なんとも嘆かわしい。
私もそれに何の異論も発してこなかった。申し訳ないな」
と旦那様に謝罪した。

旦那様は驚いて、

「そんな。ぼ…私も社交を苦手としていましたから、特に気にしていませんでしたし」
とロックハート公爵に言うと、夫人は、

「貴方は奥方に感謝するべきですよ。アメリア様は…貴方の素晴らしさを皆にお話していました。ここに居る皆さん、本当にバルト公爵に感謝しているんですよ?それも全て、アメリア様が教えてくれたからです。…よい奥方をお持ちになりましたね」
と笑顔で言った。

旦那様は私の顔を驚いたように見る。

私が積極的に社交に勤しんでいた事は旦那様も把握していたが、そこで私が何をしていたか…については知らなかったに違いない。

「アメリア…君は…」
と言うと旦那様はそっと私の頭を撫でた。
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