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第108話
しおりを挟む私が地道に旦那様のイメージアップ大作戦に勤しんでいる頃、私の元家族に関する報告が上がってきた。
「父が?」
「元・父親な。脱走しようとして捕まった」
「で、どうなるのです?」
「金の返済さえすれば自由になれたんだがな…。脱走は罪だ。刑事罰を加算される事になるか…今以上に条件の悪い場所に移されるかだな」
と旦那様は少し呆れたように言った。
「どうしてそんな馬鹿な事を…。他の者は、真面目に働いているのでしょうか?」
「あ~。まぁ…まぁ。真面目にと言うのは少し難しいがな。文句を言いつつも受け入れていると言う所か」
脱走しようとした父よりはマシと言う事だろう。
「では父は牢へ?」
「あぁ。ただ僕としては借金さえ終わればそれ以上の事を求めるつもりはない。…とはいえ、全額返済までにはまだ程遠いがな」
「では…また強制労働へ戻るという事ですね?」
「あぁ。僕としてはそれを望むよ。
ただ、今まで働いていた所より、ずっと過酷な場所になるだろうがな」
と言う旦那様に私は、
「…旦那様。父が牢へ居る間に、1度面会する事は可能でしょうか?」
と訊ねる。
旦那様は驚いた顔で、
「一体何故?今さらあの男に何の用だ?」
と私の顔を覗き込む。
「その場所に移されれば、きっともう2度と会う事はないでしょう。
それならば父にどうしても言っておきたい事があるんです」
と言う私の答えに旦那様は渋い顔をした。
「……許可はするが、僕も立ち会う。それで良いか?」
と不機嫌そうだが、旦那様は私の願いを聞き入れてくれた。
「旦那様が一緒なら、心強いです。ありがとうございます。
あ、旦那様…それと、ロックハート公爵家の夜会に招待されたのですが…」
と私が招待状を見せながら言えば、旦那様はますます嫌そうな顔をした。
私はそんな旦那様に笑いながら、
「前回のお茶会では、途中で失礼してしまいましたから、今回はこの前の謝罪の意味も込めて、お受けいたしましょう?
大丈夫、あちらも殿下の件で謝罪したいのだそうですよ?」
と言えば、旦那様は、
「…仕方ない。アメリアがそう言うなら」
と渋々頷いてくれた。
今まで王家の夜会にしか参加した事のない旦那様だ。
旦那様のイメージアップとしては、かなり大きな一歩と言えるだろう。
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