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第102話

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思わずしゃがみこんだ私にネイサンは、

「じゃあな。お前の旦那が裏切らない事を祈るんだな」
と言葉を残して部屋を出た。

扉の鍵がガチャリと閉まる。
私はその音に我に返り、

「開けて!お願い!」
と扉へ駆け寄るとドアノブをガチャガチャと回す。

だが、もちろん開きはしない。

何度か体当たりをしてみても、扉はびくともしなかった。

私は扉を目の前に、床へズルズルと座り込む。

「どうしよう…」
私はお腹に手を当てる。私の赤ちゃん…。

ここで泣いていても始まらない、私は立ち上がり、鍵が開けられるような物がないか探し始めた。

すると、少し遠くの方から『うっ、うわぁ!!!』と叫び声のような物が聞こえた。

何?何が?あの声はネイサン?

何が起こっているのか分からず、私は身構える。

すると、『ドン!!』という大きな音がした。
閉じ込められている部屋が微かに揺れる。

どこかで何かが崩れたような音だ。
すると、部屋に向かって走ってくる足音が聞こえる。

ネイサンが帰って来るのか?
私がそう考えた瞬間!

「アメリア!」
と思いっきり扉が開いたかと思えば、そこに、血相を変えた旦那様が立っていた。

「旦那様?!」
と私が驚くと同時に私はもう旦那様の腕の中に居た。

「アメリア、遅くなってすまなかった」
と旦那様は私をきつく抱き締める。

私は旦那様の匂いに包まれながら、気が緩んでしまい、涙が流れる。

「旦那様…怖かったです」
という私に、

「大丈夫だ。もう大丈夫だから」
と私の背中をゆっくりと撫でる旦那様。

私は、旦那様の腕の中で顔を上げ旦那様を見上げようとした。
その視界に、例の球体の光がゆっくりと大きくなっていくのが見えた。


「旦那様!爆発します!!!」
私が叫ぶと同時に旦那様は、

「何?!」
と振り返り、その球体を視界に捉える。

旦那様は私を思いっきり抱き締めると、次の瞬間、その場から私と共に一瞬で外へ出た。


少し離れた場所で爆発音がする。

「…不味いな…。ネイサンが死んだかもしれない…ライオネルに叱られるかな」
と旦那様が顔をしかめた。

まだ心臓がバクバクしてる。…死ぬかと思った。

旦那様は私を抱き締める手を緩めると、

「アメリア無事か?怪我は?体調は?」
と私の腕を掴むと、上から下まで確かめるように私を見た。

「はい。大丈夫です。旦那様は?」

「僕は問題ない。…が、とりあえず、ネイサンの様子を見に行くか…」
と言うと、私の手を握り、また転移魔法で私が閉じ込められていたであろう家の残骸が見える位置まで戻って来た。


そこには、繭のような物に包まれた物体が転がっている。
旦那様はそれを靴の先で蹴ると、中から呻き声が聞こえた。

「生きてるな。僕の魔法にこいつも感謝だろ」

この繭みたいな物に包まれているのはネイサンらしい。
それに、この繭のお陰でこの爆発からも守られていたのだろう。

旦那様は魔法で鳥を出すと、その鳥は一瞬で消えた。
そして、その繭らしき物へ杖を一振りすると、その繭もどこかへ消えた。

「旦那様…ネイサンは…?」

「ライオネルの元へ送った。後はあいつがどうにかする」

旦那様は私の手を片時も離さない。

私は、

「旦那様、助けに来て下さってありがとうございました」
と改めてお礼を言った。

「遅くなったな。指輪が壊されていたから、アメリアが何処に連れていかれたのか探すのに時間が掛かった」

「居場所…よくわかりましたね?
私が閉じこめられている所には認識阻害魔法がかけられているってネイサンが…」

「あぁ。確かに。あの建物は目には見えなかった。だがちゃんと感じられたからな」
と旦那様は頷く。

「感じられた?」
私が首を傾げると、旦那様は少し屈んで私のお腹に手を当てた。

「この赤ん坊には、僕の魔力が感じられた。この子のお陰でアメリアを見つける事が出来た」
と私に旦那様は微笑んだ。
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