102 / 117
第102話
しおりを挟む思わずしゃがみこんだ私にネイサンは、
「じゃあな。お前の旦那が裏切らない事を祈るんだな」
と言葉を残して部屋を出た。
扉の鍵がガチャリと閉まる。
私はその音に我に返り、
「開けて!お願い!」
と扉へ駆け寄るとドアノブをガチャガチャと回す。
だが、もちろん開きはしない。
何度か体当たりをしてみても、扉はびくともしなかった。
私は扉を目の前に、床へズルズルと座り込む。
「どうしよう…」
私はお腹に手を当てる。私の赤ちゃん…。
ここで泣いていても始まらない、私は立ち上がり、鍵が開けられるような物がないか探し始めた。
すると、少し遠くの方から『うっ、うわぁ!!!』と叫び声のような物が聞こえた。
何?何が?あの声はネイサン?
何が起こっているのか分からず、私は身構える。
すると、『ドン!!』という大きな音がした。
閉じ込められている部屋が微かに揺れる。
どこかで何かが崩れたような音だ。
すると、部屋に向かって走ってくる足音が聞こえる。
ネイサンが帰って来るのか?
私がそう考えた瞬間!
「アメリア!」
と思いっきり扉が開いたかと思えば、そこに、血相を変えた旦那様が立っていた。
「旦那様?!」
と私が驚くと同時に私はもう旦那様の腕の中に居た。
「アメリア、遅くなってすまなかった」
と旦那様は私をきつく抱き締める。
私は旦那様の匂いに包まれながら、気が緩んでしまい、涙が流れる。
「旦那様…怖かったです」
という私に、
「大丈夫だ。もう大丈夫だから」
と私の背中をゆっくりと撫でる旦那様。
私は、旦那様の腕の中で顔を上げ旦那様を見上げようとした。
その視界に、例の球体の光がゆっくりと大きくなっていくのが見えた。
「旦那様!爆発します!!!」
私が叫ぶと同時に旦那様は、
「何?!」
と振り返り、その球体を視界に捉える。
旦那様は私を思いっきり抱き締めると、次の瞬間、その場から私と共に一瞬で外へ出た。
少し離れた場所で爆発音がする。
「…不味いな…。ネイサンが死んだかもしれない…ライオネルに叱られるかな」
と旦那様が顔をしかめた。
まだ心臓がバクバクしてる。…死ぬかと思った。
旦那様は私を抱き締める手を緩めると、
「アメリア無事か?怪我は?体調は?」
と私の腕を掴むと、上から下まで確かめるように私を見た。
「はい。大丈夫です。旦那様は?」
「僕は問題ない。…が、とりあえず、ネイサンの様子を見に行くか…」
と言うと、私の手を握り、また転移魔法で私が閉じ込められていたであろう家の残骸が見える位置まで戻って来た。
そこには、繭のような物に包まれた物体が転がっている。
旦那様はそれを靴の先で蹴ると、中から呻き声が聞こえた。
「生きてるな。僕の魔法にこいつも感謝だろ」
この繭みたいな物に包まれているのはネイサンらしい。
それに、この繭のお陰でこの爆発からも守られていたのだろう。
旦那様は魔法で鳥を出すと、その鳥は一瞬で消えた。
そして、その繭らしき物へ杖を一振りすると、その繭もどこかへ消えた。
「旦那様…ネイサンは…?」
「ライオネルの元へ送った。後はあいつがどうにかする」
旦那様は私の手を片時も離さない。
私は、
「旦那様、助けに来て下さってありがとうございました」
と改めてお礼を言った。
「遅くなったな。指輪が壊されていたから、アメリアが何処に連れていかれたのか探すのに時間が掛かった」
「居場所…よくわかりましたね?
私が閉じこめられている所には認識阻害魔法がかけられているってネイサンが…」
「あぁ。確かに。あの建物は目には見えなかった。だがちゃんと感じられたからな」
と旦那様は頷く。
「感じられた?」
私が首を傾げると、旦那様は少し屈んで私のお腹に手を当てた。
「この赤ん坊には、僕の魔力が感じられた。この子のお陰でアメリアを見つける事が出来た」
と私に旦那様は微笑んだ。
68
お気に入りに追加
1,726
あなたにおすすめの小説
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。
【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】
大好きな旦那様はどうやら聖女様のことがお好きなようです
古堂すいう
恋愛
祖父から溺愛され我儘に育った公爵令嬢セレーネは、婚約者である皇子から衆目の中、突如婚約破棄を言い渡される。
皇子の横にはセレーネが嫌う男爵令嬢の姿があった。
他人から冷たい視線を浴びたことなどないセレーネに戸惑うばかり、そんな彼女に所有財産没収の命が下されようとしたその時。
救いの手を差し伸べたのは神官長──エルゲンだった。
セレーネは、エルゲンと婚姻を結んだ当初「穏やかで誰にでも微笑むつまらない人」だという印象をもっていたけれど、共に生活する内に徐々に彼の人柄に惹かれていく。
だけれど彼には想い人が出来てしまったようで──…。
「今度はわたくしが恩を返すべきなんですわ!」
今まで自分のことばかりだったセレーネは、初めて人のために何かしたいと思い立ち、大好きな旦那様のために奮闘するのだが──…。
今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
hotランキング1位入りしました。ありがとうございます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる