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第99話
しおりを挟む微かな物音に私の意識は浮上した。
ゆっくりと瞼を開ける。そこには見知らぬ天井があった。
私はゆっくりと体を起こす。知らない部屋の知らない寝台に寝かされていたようだ。
咄嗟に自分の体を触って確かめる。
着衣に乱れもない。そっとお腹に触れる。大丈夫…痛みもない。しかし、お腹に触れた自分の手を見て驚いた。
「指輪がない…」
そう呟くと、直ぐ側で、
「指輪は捨てた。あの男の魔法がかかっていたからな」
と男の声がして、私はびっくりして、叫びそうになるのをグッと堪えた。
「…貴方は?」
私は男の顔を見る。
意識が無くなる前に見た、黒目黒髪で頬に傷のある男が立っていた。
「俺の名はネイサン。ネイサン・ブラックだ」
と男は半笑いの顔で自分の名を告げた。
「ネイサン?貴方が?」
と私が訊ね返すと、
「ふーん。俺の名を知っているのか。じゃあ、俺が何者なのかも知ってるって事だな」
と男はニヤリと笑った。
笑った拍子に頬の傷がひきつれる。
「それ…痛くないの?」
思わず訊ねた私に、
「自分の心配より、俺の傷の心配か?
どうって事ない。ただ、治癒魔法は不得手だからな」
と男…いや、ネイサンは自分の頬の傷を撫でた。
「此処はどこ?」
と質問する。
答えては貰えないかもしれないが、何か話をしていないと不安で叫び出してしまいそうだ。
「此処か?俺の最後の隠れ家だ。
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「あぁ。そうなるな。交換条件ってやつだ。俺が無事に高跳び出来たらお前を解放する。だが…上手くいかなかった場合は…」
そこで言葉を切ったネイサンに、私は
「その場合は私を殺すの?」
と自ら訊ねた。
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