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第93話

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翌日から、殿下の花束とメッセージカードは届かなくなった。

ユージーンによると、
『陛下にめちゃくちゃ怒られたらしいですよ。殿下はウィル様がこの国でどれだけ重要なのかを理解していなかったみたいですね…多分馬鹿なんでしょう。顔は良いですけど』と余計な一言付きで私に教えてくれた。

どうも、水面下で公爵令嬢との婚約計画が進行中だそうだ。
ただ、その令嬢がまだ9歳と言うから……殿下としてはかなり嫌がっているのだとか。


穏やかな日常が戻ってきたある日。

今日はオーデル夫人のレッスンの日だ。

「アメリア様は随分と上達されましたね。他の貴族家の特徴も、一通り覚えていらっしゃるし」
とレッスン終了後、オーデル夫人とお茶を楽しんでいたら、褒められた。

「これも全てオーデル夫人のお陰です。ただ…夜会もお茶会も、何故か直ぐに帰る羽目になってしまって…皆様と会話を楽しむ所まではいきませんの」

…好奇の目に晒される事は多いが、楽しい会話にまで発展した試しはない。
当然友達も出来そうにない。

「それは、公爵様のせいでしょうねぇ。アメリア様を何処にも出したくなさそうですもの」
と笑うオーデル夫人。私は首を傾げて、

「それは…やはり私がまだ公爵夫人として足りない部分が多いからですね…」
と少し悄気ていると、

「まぁ、まぁ。違いますよ。公爵様がアメリア様を囲い込んでいるのは…いえ、理由は公爵様ご本人に訊ねられた方が良いと思いますよ?私がここで言ってしまうのは…公爵様に申し訳ありませんもの」
とオーデル夫人は微笑んだ。

何の事を言われているのかわからない。

オーデル夫人は私に、ほんの少しの謎を残して、レッスンを終えて帰って行った。

私はメグに、

「ねぇ…オーデル夫人がお茶の席で言っていた事…メグには意味がわかった?」
と訊ねると、

「この世界中でわかっていないのは、奥様だけでしょうね」
と少し呆れるように私に言った。

…へ?私だけわかってないの?

そんな中、ロバートが、

「奥様…奥様に面会と言う方がお見えでして…先触れもありませんし、お断りしましょうか?」
と苦虫を潰したような顔で現れた。

そういえば、ロバートって表情豊かよね?家令として…どうなのかしら?
と、それよりも、私に来客?

「まさか…デイブ…」
殿下じゃないわよね?と訊ねようとすると、

じゃあ、ありません。別口です」
とロバートはサラッと言った。

王太子を『それ』って言っちゃあダメじゃない?
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