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第92話
しおりを挟む結局、別の場所に連れて来られて、私の目の前には満面の笑みのデイブ王太子殿下…。
もちろん、護衛も居るし、お茶の準備をしてくれる侍女も居る…すっごく遠いけど。
「ずっと、花束とメッセージカードを贈ってたんだけど…迷惑だった?」
カップをイジイジしながら話すデイブ殿下は私より歳上だというのに、少し幼く見える。…あざとい系男子?
「メッセージカードも読まずにお返ししてしまった事に関しては、申し訳なく思っております。
しかし…私には花束もメッセージカードも受け取る理由が御座いませんので」
王太子殿下に『迷惑です』と言える人ってこの国でどれだけ居るだろう。
遠回しに言う事しか私には出来ない。
「そうか…。迷惑ではなかったんだね!良かった。理由があれば受け取ってもらえる?」
どこをどう聞けばそう聞こえるんだ?!
「どう考えても、受け取る理由がないと思うのですが…。
それに主人からも受け取らないように言われております。
これ以上贈られても、受け取る事は出来ません」
言ってやったぞ!ちゃんと!無理って!
「うーん…バルト公爵が邪魔だなぁ…」
…え?なんか不穏な独り言が聞こえたんだけど?
「殿下。婚約者を決めるタイムリミットはもう迫っているのでは?
私は元は伯爵家の出ですし、殿下に相応しいご令嬢は他にもたくさんおりますわ」
「そんな!僕は君が良いんだ。バルト公爵とは離縁して…」
と、殿下が私の手を握ろうとした瞬間、少し離れたお茶会の席がざわつき始めた。
「貴方!ちょっと!勝手に入らないで!」
「何故だ?妻を迎えに来ただけだ」
ロックハート夫人と揉めてる男性の声…あれは…
私が振り返ると、そこには物凄く怖いオーラを纏った旦那様が立っていた。
「アメリア、迎えに来た」
と旦那様は殿下に触れられるギリギリにあった私の手を取って椅子から立ち上がるように促した。
私が、
「旦那様、ありがとうございます」
と言うと、旦那様は小声で、
「遅くなった。ライオネルを問い詰めるのに時間がかかった」
と私に囁いた。そして、殿下に、
「流石にこれはやり過ぎではないですか?」
と冷たく言い放つ。
「バルト公爵…。僕は次期国王だ。お前、自分の立場がわかってるのか?」
と殿下が応戦する。
…え?脅し?
「ふん。殿下の方こそ勘違いしてもらっては困ります。
殿下、すぐに王宮にお戻り下さい。陛下がお呼びですよ」
と旦那様が殿下に告げると直ぐに、
「殿下!陛下が至急王宮に戻るようにと!大層お怒りで御座います!」
と殿下の護衛が大慌てで殿下を迎えに来た。
「は?父上が?」
と驚く殿下を護衛は急いで連れて行く。
殿下は私に振り返りながら、
「僕は諦めないからな!」
と叫んだ。
「アメリア、遅くなってすまなかったな。もうこれ以上殿下がしつこくする事はないから」
と私に言う旦那様に、
「旦那様…まさか陛下に?」
と訊ねると、
「あぁ。これ以上アメリアにしつこく付きまとうなら、僕がこの国を捨てると言ったからな」
と、事も無げにサラッと言った。
「へ?」
私が驚いた声を挙げると、
「さぁて、帰るか。色々と忙しかったから流石に疲れた」
と私をエスコートするように腕を出した。
陛下を脅してまで、私を助けてくれた旦那様…かっこよすぎません?
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