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第91話
しおりを挟む「貴女…さっき遅刻してきた方ね」
ライラックを見るなり、ロックハート夫人の片方の眉がピクリと上がる。
あそこだけ動かす事が出来るなんて…器用だな。
「お初にお目にかかります。ライラック・ワーカーで御座います」
少しふらつきながらもカーテシーをするライラックに、私も慌てて、
「お騒がせして申し訳御座いません。アメリア・バルトに御座います。
本日はお招き頂き、ありがとうございました」
と挨拶をした。
「ワーカー伯爵…あぁ、あの貧乏貴族の。あら?私、貴女なんて招待したかしらね?」
とライラックを目の端に入れながら小首を傾げるロックハート夫人はやはり、どことなく気品があった。
…しかし…貧乏貴族って…。
そんな事を気にする様子もなく、
「もちろんご招待していただきましたわ!ロックハート公爵夫人のお茶会に参加出来るなんて、もう嬉しくて!」
とはしゃぐライラックにロックハート夫人は少し顔をしかめた。
ライラック…。私から見てもマナーがあまり…。私も人の事は言えないだろうけど。
そんなライラックに、
「何か送り先を間違ったのかしらね。まぁ良いわ。遅刻した上に騒ぎを起こさないで。皆様にご迷惑だわ」
と言う夫人。
めちゃくちゃ嫌そうな雰囲気が漂っている。
しかし、ライラックはそんな事はお構い無しに、
「では…ねぇ!殿下、私のテーブルに行きません?」
と殿下の腕に不躾に触れようとした。
…不味いんじゃ…
と私が思うより早く、
「触るな!無礼者!君…不快だよ。出ていってくれないかな?」
と殿下が強く拒否をした。
その殿下の言葉に、
「へ?」
と場違いな声をあげるライラック。
「それに…アメリア嬢にも失礼な態度だったしね。
叔祖母様、こいつを撮み出して下さい!」
との殿下の言葉に、
「そうね。護衛!このお嬢さんはもうお帰りになるわ!どうせ馬車も時間で借りただけでしょうから、うちの馬車で送って差し上げて」
とロックハート夫人が護衛に声を掛けると、数人の護衛がライラックを連れだそうとする。
「ちょ…ちょっと待って下さい。せっかくのお茶会なのに!嫌です!」
とライラックは抵抗するも、ロックハート夫人はそちらをちらりと見ただけで、その後、ライラックの事を1度も見る事はなかった。
そしてロックハート夫人は私を見ると、
「初めまして。貴女がバルト公爵の奥様なのね。あのバルト公爵が結婚した事も驚きだけど…お美しい方ねぇ。
デイブが手にいれたいと言うのも理解出来るわ」
…あのバルト公爵…という言い方が若干引っ掛かるも、それ以上に気になる言葉を聞いたような気が…。
「そうでしょう?僕は何度も『会いたい』と申し入れているんですが…いつも邪魔されてしまって。今日は本当に感謝しますよ。叔祖母様」
「可愛い姪孫の頼みですもの。ここでは何だから2人であちらで話して来たら?あ、流石に2人っきりはダメですよ?一応、まだバルト公爵夫人なんですから」
2人の会話に眩暈がしそう…。
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