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第88話
しおりを挟む「メッセージカードの中身は何なのかしら?」
1度も開かれないまま、デイブ殿下へと返されるメッセージカード。
結婚している女性にメッセージカードを送る方が悪いのだという旦那様の言葉に納得はしているが、申し訳なく思う気持ちも確かにある。
そんなある日。
「ステラ・ロックハート公爵夫人?」
「はい。現在の国王陛下のお父様…元国王陛下の妹君に当たられる方です」
「つまりは…元王女様って事ね。で…その方が私をお茶会に?」
「はい。そのようで御座います」
私はメイナードから渡された招待状を読む。
「お茶会…。一応今もオーデル夫人にマナーのレッスンをお願いしているけれど…自信はないわ」
夜会が終わっても、私は週に2回程、オーデル夫人のマナーレッスンを続ける事になった。
何にもしなくて良いと言われて嫁いだのだが、旦那様は由緒正しい公爵家の主人。…流石にその妻が何にも出来ませんでは済まされない。
これは、私からのお願いだったのだが、オーデル夫人は快く引き受けてくれていた。
「お坊っちゃまは『断れば良い』と仰っておりましたが…このロックハート夫人…中々厄介でしてね」
「厄介?」
メイナードが少し顔をしかめながら夫人について口にする。その様子からも、『断って欲しくない』という気持ちが見え隠れしていた。
「はい…。まぁ、ご婦人方というのは往々にして噂話が好きで御座います。その中の最たるお方がこのご夫人でして…」
「なるほど。…断れば、私は陰口を言われかねない…そういう事かしら?」
私がそう言うと、
「その通りで御座います。それに夫人は自分はチヤホヤされて当然と思っておりまして。自分の太鼓持ちのようなご夫人方やご令嬢を側に侍らすのが大好きな方なのですよ。
派手な事も好きで、良くお茶会だの音楽会だのと開いては、人を集めて…」
メイナードの言葉が段々と荒くなっていく。
このロックハート夫人の事を良く思っていない事は一目瞭然だ。
「そう。そうやって自分を持ち上げてくれる人を集めて、気分が良くなる事をするのが好きなのね。今まで、このバルト家と関わりは?」
旦那様の亡くなった御義母様よりお歳は上だろう。それならば、御義母様もお茶会に誘われていたのかしら?
「前公爵夫人は嫁いで直ぐに懐妊されまして…。バルト公爵夫人としてお茶会に参加した事はありません。
しかし、独身時代には何度か招待されていたようです。…が、あまり仲良くされていた印象はありません。前公爵夫人は人を褒めたり、おべっかを使うのは苦手だったようで…」
…旦那様の御義母様は、嘘が下手だったのかもしれない。
「そんな方がどうして私を?私の母もお茶会に呼ばれていた記憶はないけど…。継母はどうだったかしら?でも、そのご夫人の名前も聞いた記憶はないわ」
と私は素直に話す。
「どちらにせよ、ご夫人方の中でかなり力を持っているのがこのロックハート公爵夫人です。お茶会に招待されるのもステータスではありますが、何故今、うちに招待状が届いたのか…。まぁ…参加しても愉快なお茶会でない事は確かですね」
それはそうか。主催者のご機嫌取りばかりのお茶会など、楽しい訳はない。
だけど…そう言いながらもメイナードの目は『出来れば参加して欲しい』とそう言っている。
…国王陛下の叔母に当たるのだし…機嫌を損ねると厄介なのは間違いないだろう。
…しかし、気が重い。
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