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第87話
しおりを挟む「今朝もまた届いておりまして…」
とメイナードが困ったように私に花束を差し出した。
「送り返せ」
と私が花束に手を伸ばす前に、横からその花束を奪い取った旦那様は、メイナードにそれを押し付けるとそう言った。
夜会の次の日から、デイブ殿下から毎日の様に花束とメッセージカードが届くようになってしまった。
旦那様は、
「ライオネルの奴!後は任せろとか言ってなかったか?」
と不機嫌そうな顔で朝食の席に着いた。
私も旦那様の後に続いて席に着くと、旦那様は、
「アメリア。メッセージカードも読まずに突き返せ。わかったな?」
と私に言う。これも毎日の事だ。
「はい。…しかし不敬になりませんか?それが心配で…」
と私は不安になるのだが、
「構わん。僕がそうしろと言ってるんだから、問題ない」
こうして旦那様は最近毎朝不機嫌になる。
そして、そのせいなのか理由は定かではないが、最近は毎日旦那様と夫婦の寝室で夜を共に過ごす事になった。
…正直、嬉しい。ただ、何故か最近の旦那様が私を激しく求めてこられるので、ちょっと戸惑っているのも確かなのだけど。
メイナードは困り顔だ。
夜会での出来事はメイナードにもユージーンにも説明済みで、2人とも驚き過ぎて固まっていた。
「なんだか、奥様に向かってデイブ殿下が熱視線を送っているなぁ~とは思っていたんですよ。ダンスの最中。
何度か、エンリエッタ殿下に注意されていましたしね」
旦那様とコソコソ話していたので、全然見ていなかったが…そうだったのか…知らなかった。
「人の妻をジロジロと見つめるなど、不躾にも程があるだろう」
旦那様はそれを聞いて、嫌そうに顔を歪めた。
「正直、ウィル様にパートナーが居る事が珍しくて見ているだけかと思っていたんですけどね。まさか、奥様がデイブ殿下の初恋の人だとは…。それに留学の真の理由にも驚きですよ」
とユージーンはため息をついた。
「母の実家は隣国と取引がありまして、客人も出入りしておりました。そのせいで勘違いされたようでしたけど…」
と私が答えると、
「だからと言って、1人の女性を探すのに、留学までするとは。
些かその執着に恐怖を感じますな」
とメイナードも呆れ顔だ。
「でも、奥様はすでに結婚済み。とりあえず、早く婚約者をお決め頂く他ないですね」
とユージーンが頷くと、旦那様は、
「万が一アメリアに会いたいなどと言う事があれば、断るんだ。わかったな」
と旦那様はメイナードとユージーンに念を押した。
皆その時は、まさかそんな事が現実になるなんて思ってもみなかったのだった。
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