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第74話
しおりを挟む夜会当日。
朝から私は忙しい。
…いや、忙しいのはローラであり、メグなのだけど。
今日は王宮での夜会という事で、私は王都のタウンハウスで準備をしていた。
メグだけでは大変だという事で、ローラも私に付いてきてくれた。
使用人(特に女性)が少ないこの屋敷では仕方ない。
今まで女主人もいなかった事だし。侍女として働く者の出番は殆んどなかったのだろう。
私は2人にされるがままだ。
私としては生まれて初めての夜会。
頭の中で今まで習ってきた事を反芻するので大忙しだが、見た目は何もしていない様に見えるだろう。そこは勘弁して欲しい。
メグとローラが私をあーでもない、こーでもないと飾り付けていく。
途中に休憩を挟んで貰いながら、なんとか私の準備は完了した。
何故か夜会に行く前からヘトヘトなんだけど。
「さぁ、お支度も終わりました!………もう見に来ても大丈夫ですよ!」
とローラが扉の向こうに声をかけると、
ソロソロと扉が開いて、旦那様が顔を覗かせた。…もしかして待って下さっていたのかしら?廊下で?
「もう、準備は出来たか?」
と言う旦那様に、
「旦那様!ドレスとアクセサリー、本当にありがとうございました」
と私が走り寄ると、ローラから、
「走らない!」
と怒られた。
「ごめんなさい!」
と謝る私に旦那様は笑顔になる。
旦那様は私を見ながら、
「ドレスのお礼はこの前も聞いた。アクセサリーも間に合って良かった。…良く似合ってる」
と少し照れ臭そうに誉めてくれた。
「旦那様もとっても素敵です!」
旦那様はシルバーグレーのタキシード。
私の髪の色に似てる…なんて自惚れても良いのかしら?
「さぁさぁ、そろそろ馬車の用意も出来た頃ですよ」
というローラの声に、
「今日は…馬車に乗るのですか?」
と私が訊ねる。
「たまにはうちの馬も使ってやらなきゃな。それに、転移は皆を驚かせる」
…いつも魔法で移動していたので、ついそれが普通になってしまっていた。
…慣れって恐ろしい。
「馬車、久しぶりなので楽しみです。
…旦那様とも馬車に乗ってる間にお話出来ますし」
という私の言葉に、旦那様は赤くなりながらも、
「そうだな」
と言葉少なに答えてくれた。
そして、
「実は、アメリアに客が来てる」
と旦那様は言った。
「お客様?」
私には友人も居なければ、知人も居ない。私を訪ねてくる人?誰かしら?
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