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第69話
しおりを挟む「な?!離縁した貴族女性がどんな扱いになるのか、御存知でしょう?!」
とベイン子爵は激昂した。
「あぁ。嘆かわしい風習だが、仕方あるまい。だから、僕はこれを受理される前にお前達に見せたのだ。
今まで通り、婚姻無効としている方が、そちらにも都合が良いのではないか?」
旦那様の言葉に、イメルダ様は、
「そ、そんな!お父様!これがあれば大丈夫だと言ったではないですか!」
と子爵に詰め寄る。
「ええぃ!うるさい!お前が馬鹿な事をしたせいでこんな…」
と子爵は頭を抱えた。
「親子喧嘩は他所でやってくれ。うるさくて敵わん」
と旦那様は顔をしかめる。
すると、イメルダ様は目に涙を一杯に浮かべて、
「ウィリアム様、そこの女に申し訳なく思う気持ちは分かりますが、ご自分のお気持ちは如何なのですか?
あんなにも、私を愛して下さっていたではありませんか?!」
とすがる様な目で訴えた。
「そんな事もあったが…他の男と手に手を取って僕から逃げ出したのは、そちらの方だ。
そんな女をいつまでも未練がましく思っている程、僕は暇ではない」
と言う旦那様の発言に私は思わず目を丸くする。
後ろのユージーンも笑いを噛み殺しているのが分かる。肩が少し揺れている。
多分、私とユージーンの気持ちは同じだ。『どの口がそれを言う?!』
「そ、それは、何か思い違いをしていらっしゃいます!
私は…あの日馬車で盗賊に襲われて、命からがら逃げ出したのです!
その時の怪我のせいで最近まで記憶を失っていましたが、こうして思い出して戻って来たではないですか!
そんな健気な私をウィリアム様は捨てると仰るのですか!」
と言うイメルダ様の言葉にも、私は目を丸くした。
そして、ユージーンもまたもや笑いを噛み殺している。
そして、私達の気持ちはまた同じだろう『どの口がそれを言う?!』
「そちらの駆け落ちした相手の名前を言っても良いんだぞ?彼からの証言もある。何処に2人で逃げていたのかもな。
あの時馬車に残っていた血も獣の物だったみたいだしな。これ以上嘘を重ねても、状況が変わる事はない」
旦那様が淡々と言うと、イメルダ様の涙は直ぐに引っ込んだ。
…自由自在なのね…涙って…
そして、イメルダ様は今までのしおらしい様子をかなぐり捨て、
「ならば、バルト公爵にお願いが御座います!私は隣国より出廷命令が出されています。しかし、それは罠。向こうは私を裁判所で捕らえるつもりなのです!
公爵は『ブラック・バンディット』の捕縛の責任者。どうか私を助けて下さい!」
と叫んだ。
これが彼女の本当の目的のようだ。
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