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第67話
しおりを挟む「イメルダ様はご実家に帰られる事を嫌がっておいででした」
そう私が言うと、
「…もしかしたら、隣国から行方を探されているのかもしれない。
盗賊団の一員と思われているかもしれないからな。…名前がわかっているなら、子爵の方に連絡が行っているのかも…」
…なるほど。指名手配…とまではいかないが、盗賊団の盗んだお金をイメルダ様が使い込んでいたとしたら…同じような罪に問われてしまうのだろうか?
「旦那様…イメルダ様を助ける事は…」
私はつい訊ねていた。
「助ける…と言っても、今回、盗賊団の件では隣国とは協力関係にあるからな。難しいだろうが…そこまでアメリアが彼女の心配をするとは思わなかったな…」
と旦那様は少し驚いたような顔をした。
私だって、自分でもビックリしている。
しかし、どうしても旦那様の妻の座を横取りしてしまったような気がして…。
そんな風に私は申し訳なく思っていたのだが、再び私の前に現れたイメルダ様は、きっと私が思っているよりもずっと強かな女性だったのだ。
「公爵はご在宅かな?」
イメルダ様は父親のベイン子爵を連れて、舞い戻って来た。
「生憎、まだ仕事から戻っておりません。 それに、まず先触れでお約束をとりつけていただけませんか?それぐらいの常識はお持ちでしょう?」
ロバートは、今回は一歩もこの屋敷へと踏み入れさせるものかと、門で仁王立ちしている。
私は屋敷の2階の窓からメグと様子を伺っていたのだが、ふと顔を上げたイメルダ様と目が合った。
すると彼女はニヤリと笑い、声を出さず私に分かるようにゆっくりと口を動かした。
『そこは私の場所よ』と。
今度は子爵も流石に先触れを出したらしい。ロバートは渋っていたが、1度会わなければずっと繰り返し公爵邸に現れそうな勢いだ。
旦那様は結局、子爵との面会を許可した。私はその面会への同席を旦那様に求められた為、了承した。
約束の日。ベイン子爵とイメルダ様は意気揚々と現れた。
「僕は暇ではない。用件をさっさと話してくれ」
旦那様はベイン子爵とイメルダ様が椅子に腰かけるなり、話始めた。
「ウィリアム様!お会いしたかったですわ!」
というイメルダ様を旦那様は完全に無視すると、
「用件は何だ?」
と子爵に再度話かけた。
「まぁ、まぁ。そんな焦らなくても」
という子爵に、
「時間が勿体ない」
と冷たく話す旦那様。
私はその様子をじっと眺めているのだが、さっきからずっとイメルダ様に睨まれているような気がする。ちょっと怖い。
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