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第65話
しおりを挟む私は旦那様の腕の中で、
「ところで旦那様。イメルダ様は…どうなったのですか?」
と訊ねると、旦那様は、
「子爵家に送り届けた。何だか色々言っていたが、うちに置いておく理由はない」
と少し冷たい声で答える。私は、
「あの…イメルダ様が生きていらっしゃった事にあまり驚いていないように見えるのですが…」
と疑問を口にした。
旦那様があまりにも淡々としているからだ。
旦那様は私を抱き締めていた腕を緩めると、
「…それについて、少し話そうか」
と言って、私を長椅子へと座らせた。
「少し前に、国境沿いに現れる窃盗団について話した事を覚えているか?」
「はい。確か、団員の中に魔法使いが居るとかで、辺境伯も手を焼いていると…『ブラック・バンディット』でしたでしょうか?」
私は旦那様との会話を思い出しながら答えた。
「そうだ。実はその中の数名を捕まえていた牢屋の門番から、ある女の話を聞いた。
門番の聞いた話では、捕まった団員の恋人だか情婦だかが、窃盗団の上前をくすねていたらしく、それに気づいて別れたんだそうだ。
しかし、簡単に別れるより、上手く利用してから捨てれば良かった…折角貴族の娘だったのになと言っていたらしい」
旦那様の話がどう着地するのか分からず私は首を傾げた。
「話の意図が分からないと言った顔だな。
その団員が別れた女の名前を言っていたんだそうだ。『イメルダ・ベイン』とな」
私は驚いて、
「まさか!…そんな…」
と口を押さえた。
「門番は名前に聞き覚えがあった為に、その名を調べた。…そして僕にたどり着いたって訳だ。
その報告を受けてから僕も直ぐにユージーンに調べるように言った。そしたら、ユージーンが僕に隠していた事を話してくれたんだ。…もちろんユージーンもまさか窃盗団の一員と関係を持っていたとは知らなかったようだがな」
「では…旦那様はイメルダ様が生きていた事を…」
「あぁ、知っていた。知ったのは、つい最近だがな」
では…旦那様は知ってしまったのだ。
…イメルダ様が旦那様を裏切って、他の男性と駆け落ちをした事を…。
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