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第53話

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2人でランチを食べる。

護衛は必要なかったのか訊ねると、旦那様1人居れば、必要ないと言われた。…旦那様は攻撃系の魔法もかなり得意らしい。

逆に私には侍女は必要なかったのか訊ねられるが、私も元々実家では使用人として生活していた。一通りは何でも出来ので必要ない。


2人で他愛もない話をする。

そのうち、旦那様のお仕事が、最近、王宮へ出向く事が多くなった理由について訊いてみた。

「あぁ。隣国にな、『ブラックバンディット』という強盗団がいるんだが…国境沿いに最近良く現れるんだ。
団員に魔法使いがいるせいで…辺境伯の騎士団が手を焼いているらしい。
辺境伯も魔法使いだが、1人ではな。
それについての対策を考えていた。まぁ…何とかなりそうだ」

「それは…旦那様が自ら辺境に赴く事もある…という事ですか?」
と私は心配になって、訊ねた。

確か、イメルダ様と結婚の儀を終えたその足で、前公爵様と旦那様は紛争地に赴いたのだと聞いた事を思い出した。

「いや…今のところは大丈夫だろう。向こうの国もあの窃盗団には手を焼いている。
協力を申し出たら快諾してくれたからな。
後は辺境伯に任せる事になりそうだ。もう少し国境の警備体制を強化する必要はあるだろうが」
と言って、旦那様は1つ欠伸をした。

昨日も徹夜だったと言っていたし、お腹も満たされた。きっと眠気に襲われているのだろう。

「旦那様、少しお休みになってはいかがですか?」
と私が言うと、

「必要ない」
と旦那様は答えるが、言ったそばから、直ぐにまた、欠伸をした。

「昨日も徹夜さなったと仰っていたではないですか。眠らなくとも、体を横にするだけで、疲れが少しましになりますよ?…ほら!」
と私はそう言いながら、自分の太ももをポンポンと叩いた。

旦那様が、

「?何の真似だ?」
と不思議そうにするので、

「膝枕です!例え敷物の上とはいえ、頭を置くには固いでしょう?さぁ、どうぞ!」
と私が満面の笑みで言えば、旦那様は赤くなってモジモジし始めた。……可愛い。

躊躇う旦那様の頭を無理矢理自分の膝に乗せようと試みる。

「痛い、痛い。…自分でやるから!」
と言う旦那様に、私は手をはずし、自分の膝を指し示した。

すると旦那様が観念したように、私の太ももへ頭をそっと乗せる。

「もっと頭を預けて下さって大丈夫ですよ?」
と私が言うと、旦那様の頭から緊張が解けて、太ももに少し重みを感じる。

旦那様の長い髪が、少し風に揺れている。
旦那様は照れを隠すように直ぐ様目を閉じた。
…やっぱり可愛い。
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