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第50話

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約束の1週間、旦那様は私の願いを叶えてくれた。

毎日、旦那様に優しく抱かれていると、とても心が満たされていく事がわかる。

そう言えば、実家のメイド達も、

「体を重ねると、心も近く感じるようになる」
と言っていた事を思い出す。

それに…旦那様はいつの間にか、首に下げていた指輪を外していた。

私が朝、横に眠る旦那様の胸に手を伸ばす。そこに、イメルダ様の指輪はなかった。

「くすぐったい」
胸に伸ばした私の手を旦那様が掴む。

「すみません。また起こしてしまいました」
これは、最近の朝のいつもの光景。

先に目を覚ます私の気配で旦那様を起こしてしまう。
今日は気配ではなく、物理的に起こしてしまったが。

「いい。どうした?僕の胸に何かあるのか?」
と訊ねる旦那様に、

「いえ。『ある』のではなく、『ない』ので。気になりました」
と私が答えると、

「……指輪か…。お前がいつも見ていただろう?気になるのだろうと思ってな」
と旦那様が少し微笑む。

「…つい、無意識に。指輪を見る度に申し訳ない気持ちになっておりました」

「申し訳ない?」

「はい。旦那様がイメルダ様を想っているのは、承知しているのです。
旦那様にとって、私との…閨は…。無理を強いているのではないかと、指輪を見る度に申し訳なく、感じておりました」
私は素直に自分の気持ちを告げた。

「……アメリア…」
と私の名前を呼びながら、私を抱き締める。

…名前を呼ばれたのって…初めてじゃないかしら?旦那様は私の名前なんて、てっきり忘れてしまっているのではないかと思っていた。

私は旦那様の腕に囲われながら、指輪の消えた胸に頬を刷り寄せる。

旦那様はそれ以上何も言わないし、私も何も言う事は出来なかった。

何度謝っても、私は旦那様の赤ちゃんが欲しいから、旦那様に無理をさせてしまう。
そんな私が旦那様を慰める事は出来ないのだから。

私はその温もりに、いつの間にか眠ってしまっていた様で、目を覚ますと、旦那様はもう横には居なかった。

ローラを呼んで、身支度をする。

ローラは、

「お坊っちゃまから、奥様はまた眠ってしまったから、起こさないようにと言われておりました。お坊っちゃまは、今日も王宮です」
と私の髪を解かしながら、言う。

私が、

「旦那様、最近は毎日王宮でお仕事ね」
と言うと、

「なんだか、国境沿いでいざこざがあるみたいですよ。私も詳しい事は知りませんけど」
とローラが答えてくれた。

そういえば、前に王宮へ行った時にも辺境の事で会議をしていた事を思い出す。

…旦那様は私に仕事の話をしてくれるかしら?質問しても良いのかしら?

出来れば私はもっと旦那様の事を知りたい。いつの間にかそう思うようになっていた。


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