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第47話
しおりを挟む朝起きると、横に旦那様の寝顔…。
不思議だ。
私が身動ぐと、旦那様は、
「起きたのか?」
と少し眠そうな声で話しかけてきた。
「はい。…あの旦那様、こういう場合、どうしたら良いんでしょうか?」
「どうしたら?とは?」
「えっと…裸なので…いつ夜着を身につけたら良いのでしょう?それに、私の夜着はどこへ…?」
と私が訊ねると旦那様は、クスクスと笑って起き上がり、寝台の下に落ちていた自分のガウンを羽織ると、私の夜着も拾って渡してくれた。
「僕は先に部屋へ戻るよ。お前はもう少し休んでいると良い」
と言って、部屋を出て行った。
私はそれを見計らって寝台から出ると、夜着を身につけた。
体はやけにさっぱりしている。これも旦那様の魔法かしら?
休んでいろ…と言われたので、素直に寝台に戻る。
昨晩の事はちゃんと覚えている……知識だけではどうにもならない事もあるのだと思い知った。
だって、恥ずかしさから逃れる方法については本に書いてなかったし。
思い返しても…恥ずかしいが、なんとなく胸の奥が温かい。
旦那様がとても優しくして下さったからかしら?
旦那様の気持ちはわからないが、嫌がってはいなかったと思いたい。
私は結局その後、2度寝をしてしまい、いつもより随分と遅い時間にローラに起こされた。
身支度をして貰い、食堂へ向かう。少し早い昼食だ。
「今日は旦那様は…?」
と私がメイナードに訊ねると、
「今日は王宮へと赴かれました。夕食までにはお帰りになるとの事です」
と答えが返ってきた。
…旦那様、私の渡した日程表を見て下さっているかしら。昨日から1週間、毎日子作りに協力して頂きたいのだけど…。
「今日は旦那様と夕食を共に出来るわよね?」
と私が再度訊ねると、
「はい。もちろんです。お坊っちゃまもそのつもりでいらっしゃるようでしたよ」
と言われ、つい笑顔になる。
いつも旦那様の仕事が忙しくて、あまり夕食はご一緒する事が出来ないからだ。
それなら、今日もお願い出来るかもしれない。
有言実行、旦那様は夕食前に戻って来た。
私は玄関に出迎えに行く。
いつもは見送りも出迎えも必要ないと言われているが、今日はなんとなく、『妻』としての役割を果たしたい気分だ。
「お帰りなさいませ」
「ん?珍しいな。無理はしなくて良いぞ?」
「今日はお帰りが早かったので。たまには良いかな~と思いまして」
私が素直にそう言うと、
「そうか。あ、あと…今日の夕食は共にしよう」
とあっさり告げると、さっさと着替えに向かう。
でも、ほんのり耳が赤いような…。
すると旦那様の後ろから屋敷に入ってきたユージーンが、
「今日はやたらと仕事を早く片付けてたんですけど…もしかしたら、奥様と夕食を一緒にとりたかったから…ですかね?」
と独りごちた。
私はその言葉に、ユージーンへと振り返る。
もしそれが本当なら、嬉しい。
夕食は私が話しかけて、旦那様は相づちを打つぐらいで、会話と言える程ではないが、私は楽しい。旦那様もそうだと良いのに。
私は夕食後、旦那様の部屋へ向かう。
今日の夜もお願いする為だ。
旦那様の許可を得て、入室する。
そこには相変わらずイメルダ様の肖像画。
その絵を見ると、少しだけ旦那様に申し訳ない気持ちになる。
それに…旦那様の胸には例の指輪が鎖に通されて揺れている。
昨日の行為の最中もそれを見て申し訳ない気持ちになった事を思い出した。
私は、『今日も』とお願いする言葉が、まるで喉に詰まっているように、出てこなくなった。
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