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第27話
しおりを挟む「おはようございます。体調はいかがですか?」
…もうすぐお昼だ。…おはようで合ってるのだろうか?
「お、おはようございます。たくさん休ませて頂きましたから…大丈夫です」
旦那様のお薬のお陰で、頭はもう痛くない。
目が覚めて、着替えようかな…と思う絶妙なタイミングでローラは私の部屋へと訪れた。
身支度を手伝って貰いながら、
「あの…旦那様は?」
「お坊っちゃまなら、今日は王宮でお仕事だと言って、2時間程前に出掛けられましたよ」
…何だか、私1人のんびりしているようで申し訳ない。
「あの…。気を悪くせずに聞いて頂きたいのですけど…」
「何なりと」
私はローラに疑問をぶつける事にした。
「旦那様はお顔にコンプレックスがお有りだと伺いました。その為に前髪で顔を隠しているんですよね?
私…昨日…いえ、今朝、旦那様が前髪を垂らしていないお顔を拝見しましたが……どこにコンプレックスが有るのか…全然わからなくて…」
「まぁ!お坊っちゃまが奥様にお顔を?!」
「あ、いえ!あの…偶々だと思うんです。旦那様も見せたくて見せた訳ではないと思うのですが…私には旦那様の顔は…普通に見えました。目も…2つしかなかったですし…」
「奥様…目は普通は2つでは?」
「もしかしたら、旦那様には2つ以上あるのかも…と思ってました。だからひた隠しにするのかと…」
…絶対に見られたくないみたいだったから…物凄い秘密が隠されているのだと思っていたのだ。
「お坊っちゃまの眼をみても…何も気づきませんでしたか?」
「はい…。あの…あまりジロジロ見るのは旦那様も気分が悪いだろうと思ったので、チラリと見ただけですが…」
「…そうですか。では、奥様は知らない方が良いのかもしれません…何の偏見も持たれない方が…」
…確かに。今のところ、私は気づくべき所に気づいていないようだ。
…ならこのまま、何も知らない方が良いのかもしれない…。
「わかりました。旦那様にこれ以上嫌われるのは、私としても不本意ですので、詮索するのは止めておきます」
私がそう言うと、ローラはびっくりしたように、
「え?嫌われる?何故そんな話に?だって昨晩は…その…」
言いにくそうにしていると言う事は、夫婦の寝室を片付けてくれたのかもしれない。
きっと、何があったのか、ローラも予測はついているのだろうが…まさか私の方から旦那様を襲ったとは思っていないだろう。
「…昨晩は私、酔ってしまって…あの…旦那様を襲ってしまったようなんです…なので、間違いなく旦那様には嫌われてしまったと思います。
まぁ…最初から好かれてはいないので、元々ゼロだったのがマイナスになった感じでしょうけど」
と私はほんの少しため息をついた。
「お、襲った?奥様が?旦那様を?!」
ローラの驚きは最もだ。私だって自分の実行力に驚いているんだから。
「はい…。記憶はありませんが、旦那様がそう仰ってました。
…でも私に求められているのって子作りですよね?なので、私的には問題はないのですけど…旦那様にとっては大問題だったみたいです。
子どもって1回体を重ねただけで…出来ないのでしょうか?」
と私が訊ねると、ローラは
「あ…すみません。ちょっと驚いてしまって。…そうですねぇ…1回でも出来る時は出来ます。何回やっても出来ない時は出来ません。
でもですね、奥様には、ただ子どもを生む為だけに、ここに来て頂いた訳じゃありませんよ?」
え?それ以外に何かあるのかしら?
「えっと…でも、私、公爵夫人としては何の役にも立ちませんよ?他に何をしたら?」
私は真面目にローラへと訊ねてみた。他に役割があるなら、教えて欲しい。
するとローラは、
「他の人がこの結婚をどう考えているのかなんて、知りませんけどね?私はお坊っちゃまに家族が増えた事が嬉しいんですよ。
奥様は子どもを生む為の道具じゃないんです。
奥様はお坊っちゃまの御家族になられたんですから。…私はそう考えております」
と私の手を握ってくれた。
…家族…。私には縁のない言葉だと思っていた。…家族って、何をしたら良いのだろう?
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