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第24話

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「だが…話をするのは賛成だ」

旦那様はそう言うと、私の向かいの1人掛けの椅子に腰かけた。

隣に…というのはハードルが高いのかしらね。しかし…少なくとも1週間前よりは前進したに違いない。
私は前向きに捉える事にした。


「……………………」

沈黙。

私の方から話しかけるのがベストだろうけど、何だろうこの…取っ付きにくいオーラは。
私は居たたまれなくなり、

「あの…私は少しお酒を飲んでも良いでしょうか?」

と言ってお酒を用意して手酌で注いだ。
お酒を飲むのは実は初めてだが…この緊張感を解したい。

「好きにしろ………」

また無言かぁ…。私はチビチビとお酒を口に含みながら、話題を探す。

「あの。旦那様は何をしている時が楽しいですか?」
…気の効いた質問が出てこなかった…。
下らないって笑われるかしら?

「さぁ…楽しい事など…特にない」

終わった…。会話30秒程で終了。どうすりゃいいの?

私は気づけばグラスを空けていた。他にする事がない。…もう1杯飲むか…。

「お仕事は忙しいですか?」

さぁ…次の質問だ!どう答える?

「まぁ…な」

はい、終了~。もう、何なの?この人。

「でも、魔法の研究はお好きなんですよね?」

これなら、会話続く?続くよね?

「好き…かどうかわからんが、子どもの頃から、それしか取り柄がないのでな」

ちょっと会話になってない?進歩じゃない?

「魔法って、私、ここのお屋敷に来る時に初めて見ました」
と私が言うと、

「お前の周りには、魔法使いはいなかったのか?」
と質問してくれた!会話になってる~!!

「そうですね。私は貴族に知り合いがいませんから」

「ん?学園には?」

「通っていません。それに魔法の特性がある人は魔術学校?に行くんですよね?」

「魔術学校に行くのは、学園に1年通った後だ。1年間は魔法使いでも普通に学園に通う」

「へぇ~そうなんですか。知らない事ばかりです。…私は普通じゃないから」

グラスは空だ。…よし私の緊張も良い感じに解れてきたぞ。3杯目、いっちゃおう。

「普通じゃないのか?」

「うーん…普通の伯爵令嬢ではないです。あ、でも読み書きと計算ぐらいはできます!だいじょーぶでふ」

あれ?ちょっと気持ち良くなってきたかも。フワフワするし。

「おい、飲み過ぎじゃないのか?」

あれ?心配してくれてます?

「だいじょーぶ、だいじょーぶ!だんな様はどんな魔法がつかえるのですか?」

「本当に大丈夫か?…大体の魔法なら使える」

「へぇ~みてみたいです!何かしてみてください!」

まほう!まほう!

「何かって…まぁ、良いだろう」

すると、旦那様は杖を取り出し呪文を唱えると、ベッドサイドに置いてあった水差しを引き寄せた。

「へ?水差し…空飛びました?」

「これは物を手繰り寄せる呪文だ。ほら…もう酒は止めておけ、水を飲め」

そう言うと、旦那様は新しいグラスも手繰り寄せ、水を注いだ。

「すごーい!すごいです!まほうって便利ですね…」

私はパチパチと拍手した。魔法って…凄い。

「拍手はいいから。水を飲め」
そう言って、旦那様は、私の手にグラスを握らせる。

しかし!私としてはこうして会話が続いているこのチャンスを逃したくない。

ここは酒の力という奴を借りるべきだろう。

私は水を飲む前に、グラスに入ったお酒を一気に飲み干した。

「馬鹿!そっちじゃない!こっちだ!水を飲め!」

慌てる旦那様がスローモーションの様に見える。

これが酔っぱらうという感覚なのだろう。なんだか気が大きくなってきた。

嫌がる旦那様の腕を掴んで、寝台の方へ引っ張って行った所までは覚えている。

旦那様が恐怖に歪む顔も…なんだか見た気がする。

そこからの記憶は曖昧だ。





「うーん…頭痛い…」

瞼の裏が少し明るく感じて、私は目を開ける。

見知らぬ天井に一瞬、此処がどこか思い出せない。

私は痛む頭を抱えながら、体を起こした。

ブルッ。なんか寒い…。

私は寒さに、自分の体を抱き締めると……何故か裸だ。

慌ててシーツを捲る…下も何を着けていない。


私は状況が掴めずパニックだ。すると、部屋の隅からすすり泣く声が聞こえた。

シーツを体に巻き付け、寝台を降りて声のする方へ目を向けると、そこには私と同じ様にシーツを巻き付けすすり泣く旦那様が、隅っこに踞っていた。


……どういう事?


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