22 / 117
第22話
しおりを挟む「はいっと。これ頼まれていた資料です」
ドサッと、私の部屋の机に、大量の本が置かれた。
「ユージーン様、すみません。お忙しいのに」
「いえいえ。あ、俺…私の事はユージーンで良いですよ」
「それでは、そう呼ばせて頂きますね。
それと…『私』に言い換えなくても大丈夫ですよ?
資料…こんなにたくさん…ありがとうございます」
私がローラに頼んでいた閨に纏わる事が書かれた本をユージーンさ…ユージーンが持って来てくれた。
…結構な量があるが、どうせ暇なので、読破出来そうだ。
「こちらこそ…女性であるアメリア様にこんな風に気を使わせるなんて…本当に情けない主人ですよ。あの人は」
と顔を歪めるも、ユージーンすらも旦那様の気持ちを変えるのは困難だと思っている様子が伺える。
「ところで…娼婦の件はどうなりました?」
と私が訊ねると、ユージーンはばつが悪そうに、
「アメリア様…本当に娼婦の方の手解きを受ける気ですか?
…こう…言葉にするのは難しいんですけどね、女性の方からガツガツ来られるのが苦手な男性もいる訳ですよ。
…なんなら、恥じらって貰う方が…そそられると言うかですね…。
少なくとも俺はその部類かなぁ~なんて思うんですよ」
ユージーンの言いたい事のニュアンスは伝わる。しかし、
「そうなんですね…男性にも色々と好みがあるのでしょうけど…旦那様がその気になるのを待っていては、私、おばあちゃんになってしまいそうです。
ユージーンがそういう女性が好みなのはわかりましたが…では旦那様は?
私が今知りたいのは、ユージーンの好みではなく、旦那様の好みのタイプです」
ユージーンの好みなど、どうでも良い。
「うーん。そう言えばウィル様とそんな話はしたことないですね。どうなんだろ?」
ユージーンは首を傾げるが、答えは持っていなさそうだ。
「ユージーンと旦那様は主従関係と言うより、友人のように見えます…昔からのお知り合いなのですか?」
2人の会話は、とても気安い感じに見える。
「俺達は魔術学校の同級生なんですよ。俺は侯爵家の三男でね。継ぐ家もないし。で、俺はウィル様の魔法の才能に惚れ込んで、自ら侍従に名乗りをあげた訳です」
なるほど。ユージーンは侯爵のご子息だったのね…。
彼の口振りから察するに、旦那様は本当に凄い魔法使いなのだろう…嫌われてるらしいけど。
「旦那様は…いつもどのようなお仕事をされていらっしゃるのでしょう?」
「領地は御覧の通り、森ばかりでね。領民は森に住む木こり達ぐらいです。あとは教会の関係者数名かな?
なんで、産業らしい産業はないんですけどね。ただ、ウィル様は魔法で使える道具を研究して作り出し、その製造法で儲けてます。…それと1番大きな役目…それが国防です」
「では領地経営などは…」
「殆ど必要ないぐらいです。ただ、この森を管理してるって感じですかね。まぁ、道具を生み出してるんで、金は腐るほどあると思いますよ。国防でもかなりの給金を貰ってますし。
なんで、アメリア様はお金の事は気にせずバンバン使っちゃって下さい!」
…バンバン使う場所がないし、使い道さえわからないのだけどね。
45
お気に入りに追加
1,731
あなたにおすすめの小説
【完結】引きこもり魔公爵は、召喚おひとり娘を手放せない!
文野さと@ぷんにゃご
恋愛
身寄りがなく、高卒で苦労しながらヘルパーをしていた美玲(みれい)は、ある日、倉庫の整理をしていたところ、誰かに呼ばれて異世界へ召喚されてしまった。
目が覚めた時に見たものは、絶世の美男、リュストレー。しかし、彼は偏屈、生活能力皆無、人間嫌いの引きこもり。
苦労人ゆえに、現実主義者の美玲は、元王太子のリュストレーに前向きになって、自分を現代日本へ返してもらおうとするが、彼には何か隠し事があるようで・・・。
正反対の二人。微妙に噛み合わない関わりの中から生まれるものは?
全39話。
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。
雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。
変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!
utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑)
妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?!
※適宜内容を修正する場合があります
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる