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第21話
しおりを挟む翌朝、私はいつもの癖で、また早くに目が覚めてしまった。
衣装部屋へ入り、自分1人でも着れそうなワンピースを選ぶ。
あのお仕着せはローラに捨てて貰った。
朝食…を食べるにも少し早い気もする…。
私はそっと夫婦の寝室に繋がる扉を開けた。
寝台には、旦那様が休んでいるのが見えた。
…きっと廊下側の扉も閉まっていたのだろう。仕方なく此処で休む事にしたようだ。
私はそっとまた扉を閉めて自分の部屋に戻る。
…流石に泣かれるとは思わなかったな…。まぁ、拒否されるのは想定内だったので、ショックではないが、今後どうすれば良いのか…。
1週間、時間を空けようと思ったのは、単なる思いつきだ。
あの場で私が旦那様にお願いしても無理だっただろうし…かと言って1週間後なら私を受け入れてくれるかと言えば、それも難しいだろう。
少しは覚悟を決めてくれると良いんだけど…。
私が今後についてアレコレ考えていると、控え目に私の部屋の扉をノックする音が聞こえた。
私が中から返事をすると、扉から顔を覗かせたのはローラだった。
ローラは既に身支度を終えていた私に、
「おはようございます。お早いお目覚めですね」
と声を掛けてくれた。
…聞きたい事は山のようにあるだろうに、気を使わせてしまった。
「習慣って怖いわね。いつもこのぐらいに目が覚めてしまうの。……ローラ、ごめんなさい。私、義務を果たせなかったわ」
と私が言うと、少し驚いたような表情でローラは、
「何を謝る必要があるんですか!こんな所へお嫁に来て頂いただけで、私達は奥様に感謝しているのです。それに悪いのは全てお坊っちゃまですから!」
と慌てて私に言った。
「そこでね…ローラにお願いがあるのだけど…」
「何なりとお申し付け下さい。何でしょうか?」
と笑顔で私に訊ねてくれたローラに私は、
「閨について書いている本があったら貸して欲しいの。もしこの屋敷にないのなら…購入したいんだけど…出来るかしら?」
とお願いしてみた。
…ローラの笑顔は固まったまま。不味かったかしら?
「閨の本…ですか?それは…また…何故?」
「私はそういう教育をちゃんと受けてこなかったし…それに、私が受け身のままでは…永遠に義務を果たせそうにないもの。
私、勉強しようと思って!殿方をその気にさせる手段を知りたいのよ」
私の熱意にローラはやや圧倒されながらも、
「私はそこら辺は詳しくありませんので…ユージーンに訊いてみましょう。…奥様が…その、前向きでありがたい事です」
と言ってくれた。
これなら…もう1つのお願いも聞いてもらえるかしら?
「ローラ…図々しいんだけど、もう1つお願いしても?」
「もちろんです。何なりと」
「では…娼婦の方を紹介していただけない?指南役をお願いしたいのよ」
と言う私の言葉に、今度こそローラは固まってしまった。
…やっぱりこれは、不味かったかしら?
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