上 下
19 / 117

第19話

しおりを挟む

一応無事(?)に結婚の儀を終えた私達は屋敷へと戻って来た。

公爵様改め旦那様は、何故自分はメイドと結婚させられたのかとメイナードさんに抗議していた。

「あ、あの~。今朝は申し訳ありませんでした。改めまして、私、アメリアと申します。
今朝は…あんな格好でしたので、こうしゃ…いえ旦那様がお間違えになったのは最もです。全て私の責任です」
と旦那様とメイナード様の間に割って入ると、私は今朝の事を謝った。

すると、旦那様は少し私から距離を取るように離れると、

「メ、メイドではなかったという事…だな?では何故あんな格好を?」
と私に責める様に訊ねたかと思えば、

「いや…別にお前の事情など、どうでも良い。
僕は今から仕事をする。この家の事はメイナードに訊くように」
と私の答えを待たずに、言いたいことを言うと、執務室へと戻って行った。

私はその背中をポカーンと見つめる。

…結婚の当日も仕事なんだ…。
自分の父親が仕事している姿を殆んど見た事がない私は、逆に感心してしまった。

メイナードさんは私に向き直ると、

「アメリア様、申し訳ありません。お坊っちゃまが…」
と謝罪する。

「いえ。…出ていけと言われませんでしたので、ここに居ても良いと言う事ですよね?安心しました。
これから、よろしくお願いいたします」

私はもっと旦那様に嫌悪感を持たれるかと思っていたが、それはなさそうだと安心していた。
ここで暮らす事は許可されたようだし。

「も、もちろんで御座います!必要な物など御座いましたら、何なりとお申し付け下さい。
ここにはメイドも料理人も必要最低限しかおりませんが、アメリア様…いえ、奥様には不自由のないように、努めさせていただきます」
とメイナードさんに改めて頭を下げられた。

奥様かぁ…結婚したんだな…あんまり実感はないけど。


ローラさんに手伝って貰いながらドレスからワンピースに着替える。

「今朝は私がお茶を頼んでしまったので、メイドだと勘違いさせてしまいましたね…申し訳ありません」
とローラさんに謝られるが、悪いのはお仕着せを着ていた私だ。

「いえ!私があんな格好をしていたのが悪いんです。ここにあるお洋服はどれも…素敵過ぎて…。自分の手持ちがあの服と着てきたワンピースしかなくて。
あ、裁縫道具ありがとう御座いました。お陰であのワンピースを直す事が出来ました」
と私はローラさんに裁縫道具を返した。

「奥様。ここのドレスもワンピースも全て奥様の物です。どうぞご遠慮なく。
…でも、奥様は小柄でいらっしゃいますので、大半はサイズ直しが必要かもしれませんね。1度サイズを測らせて下さいませ。それと…あのお仕着せは…もう必要ありませんよね?」

ローラさんはそう言って微笑んでくれた。

…そうね、もう必要はなさそう…よね?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。 このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。 そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。 ーーーー 若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。 作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。 完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。 第一章 無計画な婚約破棄 第二章 無計画な白い結婚 第三章 無計画な告白 第四章 無計画なプロポーズ 第五章 無計画な真実の愛 エピローグ

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。

豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」 「はあ?」 初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた? 脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ? なろう様でも公開中です。

旦那様、離縁の申し出承りますわ

ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」 大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。 領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。 旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。 その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。 離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに! *女性軽視の言葉が一部あります(すみません)

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完結】都合のいい女ではありませんので

風見ゆうみ
恋愛
アルミラ・レイドック侯爵令嬢には伯爵家の次男のオズック・エルモードという婚約者がいた。 わたしと彼は、現在、遠距離恋愛中だった。 サプライズでオズック様に会いに出かけたわたしは彼がわたしの親友と寄り添っているところを見てしまう。 「アルミラはオレにとっては都合のいい女でしかない」 レイドック侯爵家にはわたししか子供がいない。 オズック様は侯爵という爵位が目的で婿養子になり、彼がレイドック侯爵になれば、わたしを捨てるつもりなのだという。 親友と恋人の会話を聞いたわたしは彼らに制裁を加えることにした。 ※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。  無言で睨む夫だが、心の中は──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】 4万文字ぐらいの中編になります。 ※小説なろう、エブリスタに記載してます

処理中です...