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第12話
しおりを挟むメイナードさんに代わり口を開いたのは、ユージーン様だった。
「まぁ…馬車が襲われ、中の人間が怪我をしたように偽造していましたが、すぐに偽造だとわかりました。馬車の中の血も、獣の物だとすぐにわかりましたしね。
私達は彼女の跡を追ったのですが、なんと…男と駆け落ちしてましたよ。
実は、ウィル様はその時、前公爵と隣国との小競り合いに出向いていましてね。
その時、その事実を知っているのは、俺と…このメイナードさんと、ロバートさんだけでした。
俺達は秘密裏に前公爵と連絡を取り、この事を相談して…ウィル様には彼女が死んだ事にする事にしたんです。
元々前公爵も…私達も、彼女の事を良く思っていませんでしたしね。
馬車は証拠隠滅の為に私が谷底へ落として壊しました。
川も流れていたし、遺体が見つからなかったとしても不思議じゃなかった」
「で、でも、それでは公爵様が…」
「しかし、事実を告げる事は出来ませんでした。
真実を知れば、お坊っちゃまは相手の男を殺すかもしれないと不安になりました。それに、死んだとなればいつかは諦めてくれると思っていたのです。
……まさか、ここまで引きずるとは思っていなかった。私達のミスです」
とメイナードさんが苦しそうに顔を歪めた。
「3年前に前公爵様が亡くなって…お坊っちゃまはバルト公爵を継がれました。その時から、王家はお坊っちゃまに新たな伴侶をと煩く言ってきていたのです。
特に王弟殿下はお坊っちゃまを心配しておられて」
「魔術学校の友人なんだ。あの2人は。
といっても、ウィル様は友人とは思ってないかもしれないが」
とユージーン様は付け加えた。
「私達もいずれは、お坊っちゃまには諦めて結婚して後継を作っていただかなければなりません。
ですので、今回は王家の提案に乗ることにしたんですが…」
「公爵様はご納得されていない…という事ですのね」
と私は頷いた。
…何だか、話しを聞けば聞く程、私が公爵様に受け入れられる未来が見えない。
「ところで、ずっと気になっていて聞けなかったのですが…、先ほど私が王都のタウンハウスから、このお屋敷に一瞬で移動した…あれも魔法ですか?」
と私は気になっていた事を訊ねた。
「そうです。ウィル様が公爵を継いでから、王都に行かなければならない事が増えましたが、彼は王都が嫌いなんです。
なので、その為に転移魔法を考え出した。
あれなら、一瞬で移動出来ますからね。
一応、使える者は限られますが。
ちなみに俺も魔法使いです」
とユージーン様は得意気に言った。
という事はユージーン様も上位貴族である可能性が高いという事だ。
私、今までの振る舞いで粗相はなかったかしら?
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