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第57話
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何故か庭で四人、妙な状況で睨み合う結果となった。この一瞬の沈黙を破ったのはレナード様だった。
「エリン、行こう」
私の肩を抱いて屋敷の方へと促す。
「お姉様逃げるの?」
「ナタリー……。馬鹿馬鹿しすぎて話にならないわ。私は既に結婚しているのよ?私はレナード様に対して不誠実な事は絶対にしないわ。あと、ハロルド様も私に愚痴を言うぐらいなら、きちんとナタリーと話し合って下さい」
私は庭に残された二人に振り向いて声をかけると、レナード様と共に屋敷へと戻った。
部屋へ入って、私は改めて
「レナード様……色々と申し訳ありません。あの二人の痴話喧嘩に巻き込まれる形になってしまって……」
と謝罪を口にしようとした途端に、レナード様が私を抱きしめた。
「レ、レナード様?」
「エリン……俺はみっともないだろうか?」
質問の意味がわからず、レナード様の腕の中で首を傾げる。
「みっともない……とは?そんな事考えた事も……」
と口にしながら、レナード様と王太子殿下との会話を思い出した。
「まさか……先程の殿下のお言葉を気にしていらっしゃるのでしょうか?」
「…………」
無言という事は肯定という事だろうか?
するとレナード様は続けて、
「それに……この顔つきの俺はやはり怖いか?」
と尋ねる。
ハロルドに言われた事まで気にしているのか……。そう思うと何だか可愛らしい。
「いいえ。私はレナード様の事を怖いとも、みっともないとも思った事は一度もありません。私に自信を下さるとても大切な方です」
「そ……そうか。それなら良かったのだが……男の嫉妬は……どうだろう……やはりうっとおしいか?」
「嫉妬?レナード様……嫉妬して下さったのですか?」
私は少し驚いて顔を上げると、真っ赤になったレナード様と目が合った。
「じ、じゃなきゃ、あんな事……言わない。それにこんな気持ちは初めてで……自分でも戸惑っている。君に手を触れているあの男を見た時、頭に血が上って……本当は切り捨てようかと……」
やはり物騒な事を言うレナード様に目を丸くしてしまう。……ハロルドの首が目の前で無くなる所を見なくて良かった。
私は今まで嫉妬などされた事は無かった為、何故か少し嬉しいと感じてしまって、ニヤニヤしそうなのを必死に誤魔化した。
「エリン、行こう」
私の肩を抱いて屋敷の方へと促す。
「お姉様逃げるの?」
「ナタリー……。馬鹿馬鹿しすぎて話にならないわ。私は既に結婚しているのよ?私はレナード様に対して不誠実な事は絶対にしないわ。あと、ハロルド様も私に愚痴を言うぐらいなら、きちんとナタリーと話し合って下さい」
私は庭に残された二人に振り向いて声をかけると、レナード様と共に屋敷へと戻った。
部屋へ入って、私は改めて
「レナード様……色々と申し訳ありません。あの二人の痴話喧嘩に巻き込まれる形になってしまって……」
と謝罪を口にしようとした途端に、レナード様が私を抱きしめた。
「レ、レナード様?」
「エリン……俺はみっともないだろうか?」
質問の意味がわからず、レナード様の腕の中で首を傾げる。
「みっともない……とは?そんな事考えた事も……」
と口にしながら、レナード様と王太子殿下との会話を思い出した。
「まさか……先程の殿下のお言葉を気にしていらっしゃるのでしょうか?」
「…………」
無言という事は肯定という事だろうか?
するとレナード様は続けて、
「それに……この顔つきの俺はやはり怖いか?」
と尋ねる。
ハロルドに言われた事まで気にしているのか……。そう思うと何だか可愛らしい。
「いいえ。私はレナード様の事を怖いとも、みっともないとも思った事は一度もありません。私に自信を下さるとても大切な方です」
「そ……そうか。それなら良かったのだが……男の嫉妬は……どうだろう……やはりうっとおしいか?」
「嫉妬?レナード様……嫉妬して下さったのですか?」
私は少し驚いて顔を上げると、真っ赤になったレナード様と目が合った。
「じ、じゃなきゃ、あんな事……言わない。それにこんな気持ちは初めてで……自分でも戸惑っている。君に手を触れているあの男を見た時、頭に血が上って……本当は切り捨てようかと……」
やはり物騒な事を言うレナード様に目を丸くしてしまう。……ハロルドの首が目の前で無くなる所を見なくて良かった。
私は今まで嫉妬などされた事は無かった為、何故か少し嬉しいと感じてしまって、ニヤニヤしそうなのを必死に誤魔化した。
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