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第5話

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それからも私は学園に通いながら、母やアーサーの手伝いに明け暮れた。

「ファ……」
と欠伸を噛み殺すと、隣にいたミネルバは、

「エリン大丈夫?最近……隈が酷いわよ?」
と苦笑した。

「ええ、大丈夫……と言いたい所だけど、どうしても寝不足になってしまうの」

「伯父様の具合は?」

「うーん……一進一退って所かしら?」
このミネルバは学友であり、私のいとこにあたる。私の父チャールズの弟の娘だ。

「そう。しかし……ジュードの阿呆は何処に行ったのかしらね!」
とミネルバは大袈裟に怒ってみせた。

「さぁ……何の便りもなく、もうすぐ四ヶ月になるわ。婚約者だったマリアベル様も、もう限界!と言って……」

「え?じゃあ婚約は白紙?!」

「そうなの。賠償金を払えと言われたので、支払ったわ。だってこちらが悪いんだもの」

……本当は、賠償金と共に新しい婚約者を見つけて来い!とも言われたのだが、それを言ったら『じゃあ、うちのポンコツ兄貴を差し出すわ!』とミネルバは言い出しかねない。ミネルバの兄のアンソニーは本の虫で、未だ婚約者が決まらずミネルバはやきもきしていた。しかし、私は知っている。ミネルバはアンソニーが大好きで、実は選り好みをしているのはミネルバの方なのだと。
しかし、ミネルバはそれを素直に認めないし、うちを心配して、そう言い出す事は容易に想像できた。まさか、うちの阿呆ジュードの尻拭いをアンソニーにさせる訳にはいかない。

「そう……面倒な兄を持つとお互い苦労するわね」
と言うミネルバに、私は

「そうね」
とだけ返した。だってアンソニーはうちに比べれば全然ましだ。アンソニーはコミュニケーション能力が異常に低い以外に問題は見当たらない。うちのジュードこそ、ポンコツ兄貴なのだから。

すると

「ねぇ。少し……気になる事があるの」
とミネルバは私にそう言った。

ミネルバの表情は今までと違い、少し思い詰めている様に見えた。……どうしたのだろう?

「ミネルバ……どうかした?なんだか顔が怖いわ」

「こんな時に言うのもどうかと悩んでいたんだけど……エリン、私、貴女に隠し事をしたくないの」

「ちょ、ちょっと何なの?そんな……思い詰めた……」
と言う私の最後の言葉を聞く間もなく、

「この前ね、ハロルド様と、ナタリーが一緒に街で買い物をしているのを見たの」
とミネルバはそう言うと、私の反応を伺う様に私を見た。

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