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case 雪女 ①

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「お義父さん…」
私は、養父にこのやり取りを見られていた事が恥ずかしくて、布団を被った。

「なんだよ、親父。邪魔すんな」

「凛が目覚めるまで、ピーピー泣いてた男が良く言うよ。それに、凛が目覚めたら医者に診せるから、知らせろと言ってただろ」

「あ…すまん。凛が目覚めました」

「見たらわかる。ったく、誰のせいで凛がこんな風になったと思ってるんだ。だから常日頃、力をコントロール出来るように訓練しろとあれ程言っていたのに、お前がサボるからだろうが。
凛…本当にこんな男で良いのか?お前になら、養父さんもっと良い縁談を持って来てやるぞ?」

「な、何を言ってるんだよ!凛はずっと俺のだ!今までも、これからも!」


「あ~ぁ。嫌だねぇ。お預けくらってる男は…余裕がなくて」

「うるさい。今、凛にその話しをしていた所だ」

「そうか。とりあえず医者に診せるから、お前は部屋の外で待て。その後に2人に話がある」

そう言うと、大蔵の養父は、部屋を出て行った。

私は布団から、顔を覗かせて、

「お養父さん…話しって何だろう?」

「さぁ…?」

と所長は首を捻った。



お医者様からは、

「妖力はまぁ…7割程ってとこですかね。妖力が0になってたら、本当に死ぬ所だったんですから、今後は気をつけて。全回復するまでは、あまり無理をしないように」

と釘を刺されたが、他には悪いところはないと言われ、診察が終わった。

診察が終わると、所長は直ぐに私の傍にやって来た。

「まるで、忠犬だな」
と言う養父の嫌味も聞こえていないようだ。



養父は改まって、

「2人に話しておかなければならない事がある。凛、お前の父親に関係する事だ」


「お父さんに?」
私は布団から起き上がり、話を聞く。

「そうだ。何故、凛の父親が凛を私に預けたのか。それには、理由がある。凛はお前の父親から、理由を聞いた事は?」
私は首を横に振る。
私自身、疑問に思っていた事だ。

「今回の件で、私の父親、大蔵 久遠が貞光や兵六さんに協力していた事を聞いたと思うが…大蔵にはもう1つ貞光に頼まれていた事があった。それは…貞光の子孫を見張る事だ」

「見張る?」
私が不思議そうにすると、

「そうだ。貞光は自分の子孫に、自分の様な力を持った者がいつしか現れるかもしれないと考えていた。そしてその力が正しくない事に使われる事を懸念していたんだ」

「じゃあ、ずっと…代々の帝を?」

「あぁ。そうだ。もし、馬鹿な者が現れた場合は、上ノ神を滅ぼして欲しいとな」

「じゃあ…今まで上ノ神が続いているという事はそういう事ね」

「あぁ。そうだ。それに、私達は余計な口出しはしない。ただ、見張っているだけ。手助け…くらいはするがな」

「それと、私のお父さんと…どんな関係が?」

「ここまで話せば薄々感じているかもしれんが…お前の父は、貞光の子孫にあたる。第725代の帝の隠し子だ。守総の祖父の…腹違いの弟だ」
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