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case 鬼 27
しおりを挟むなんて…身勝手な言い分なんだろう。
子どもは…親の所有物ではないのに。親の好き勝手に扱って良い存在ではないのに。
「…貴方がさっき言っていたもう少しで完成する物って?」
「鬼の妖力を集めて作った武器…のような物だ。刀で1人1人殺していく時代は、とうの昔に終わった。あれなら、一気に上ノ神を滅ぼす事が出来るからな。安心しろ、その後はお前を殺してやる。鬼の妖力なら、お前が妖怪であっても殺す事は可能だ。さて…お喋りはもう良いか?桜華がお前なんかを此処に連れて来るから、相手してやったが…久しぶりにゆっくり話せて楽しかったな。俺は作業に戻る。ちなみに、お前を縛っている物には、鬼の妖力を込めてあるから、そう簡単には千切れんぞ?じゃあ、そこで自分の最期を静かに過ごせよ」
そう言うと、実氏はランタンを持って部屋を出て行った。
また部屋は暗闇に包まれる。
私は自分を縛っている物に冷気を送ったり、力任せに引っ張ったりしてみるも、びくともしない。
実氏が言っていた事は本当だった。
鬼の妖力に匹敵する程の力。
私には1つしか思い浮かばない。
だけど、どうやって此処を知らせれば良いのか…。鬼の妖力の残滓を探らせていると所長は言っていたが…。
安綱は此処にある。では、実氏の言っていた武器とやらは?
この建物には禍々しい気配が充満している。確かに鬼の妖力のようなモノも感じるが…。ここを所長が見つけ出せるだろうか?
本殿で待っていた所長は、私が戻らない事を心配しているはずだが…。
あぁ…まだ頭が痛む。そして、この禍々しい気に心が軋む。
意識が遠退いていきそうになるのを必死に耐えるが、だんだんと私の意識は薄れていった。
「……ちゃん、凛ちゃん、…凛ちゃん」
小声で私の名前を呼ぶ声が聞こえる。体を揺さぶるその手の温もりに、私の意識が浮上した。
目を開けた私の目の前に、
「……一路?」
「しーっ。助けに来たよ」
「手足が縛られてる。でもこれ、私の力じゃどうにも出来なくて…」
「これ…鬼の妖力が込められてるね。私にもちょっと無理かな。仕方ない、担いで行くね。外に八雲が居るから」
「所長…来てるのね」
「当たり前だろう?凛ちゃんが戻らないって気が狂わんばかりだったよ。あいつが私に助けを求めるなんて、初めてだからな」
「一路はどうして此処が?」
一路は自分の胸を指差して、
「凛ちゃんが付けてくれたしるしのお陰。今回は…凛ちゃんこれ、取らなかったでしょう?」
「そういえば…忘れてた」
「これは、私と凛ちゃんを繋いでるからね。久しぶりに自分の妖力を変化以外に使ったよ」
「これを手繰って来たの?大変だったでしょう?」
私から、しるしを付けた対象者を探るのは簡単だが、逆はかなり難しい筈なのだ。
「なんて事ないよ。さぁ、担ぐから。ごめんね、荷物みたいで」
「所長は?」
「外。少し離れた所に鬼の妖力の残滓が見つかった。そっちに居るよ。ところで、凛ちゃん、誰がこんな事を?」
「外へ出たら話す。今回の犯人がわかったから」
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