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case 鬼 25

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…目を開くとそこは、暗い部屋だった。
頭が痛い。油断した…。手と足は縛られているが目隠しはされていないので、周りを見回す。
私は床に転がされていた。

ここは…何処だろう?
大奥では…ないだろう。建物は粗末だが…此処には邪な気が満ちている。

私を殴って気絶させたのは…多分桜華だ。
最後に感じたあの気配…間違いないだろう。

しかし、ここにある気配は、桜華のそれとは違う。もっと、もっとオドロオドロしい。

半妖の私ですら鳥肌が立つ程に。

そして…ここに、『鬼切安綱』があるに違いない。それは直感に近かった。



「気がついたか」

暗い部屋に男の声が響く。
男の手元にランタンの様な灯りが見えるが、まだはっきりとはその声の主の姿は見えない。

猿轡はされていない。私は、

「…貴方は誰?此処は…どこなの?」

少しずつ近づいて来た男の姿が暗闇に浮かび上がる。

男は床に転がった私に更に近づく為、私の横にしゃがみこんだ。
ランタンを私の顔に近づける。小さな光でも、暗闇の中に居た私には眩しくて、思わず片目を閉じた。

「お前こそ…誰だ?人間じゃあ…ないだろう?」

私は思わず目を開き、男を見た。
男の顔がランタンの灯りに照らされて、確認出来る。

…普通の男だ。中肉中背、顔も何ら特徴はない。すれ違ったとしても、一瞬にして忘れてしまう。そんな風貌の男。この男が何故…安綱を持っているのだろうか?

「…貴方は…人間ね」

「あぁ。俺は人間だ。そう言うお前は鬼ではないな。鬼なら、分かる」

…鬼なら分かる?何故?人間に化けられる鬼も居るのに。

無言になった私に、その男は、

「まぁ…どうせお前も殺す事になるんだが…知りたい事があるなら答えてやっても良い。もうすぐだ」

「何が完成するの?」

「うん?お前は『鬼切安綱』という刀を知っているか?」

私は頷いて、

「安綱は…貴方が持っているのね?どうして?」
質問しても良いって言うんだ、遠慮なくさせて貰おう。

「あの刀は元々は物だ。返してもらっただけだ」

「貴方の物?どういう事?」

「俺の名前は『渡辺 実氏』鬼払いの渡辺家の末裔…いや生き残りだ」

「!!渡辺家は…」

「上ノ神 貞光に滅ぼされた…そう、たった1人を除いては」

「1人を…?」

「俺の祖先は、渡辺の生き残り。遠い遠い祖先の隠し子だった。渡辺が貞光に粛清された時には名字もない村娘の腹にいたんだ」

「そんな…では、貴方は…力を持ってるの?」

「隔世遺伝ってやつかな?何代かに1人、力を持つ人間が現れていた。しかし、上ノ神に復讐を誓いながらも、今までは上手くいかなかった。俺は運が良い」

「それは…封印が解けたから?」

「その通りだ。あの刀と俺…いや力を持って生まれてきた者は繋がっているんだ。ずっと。やっと…その時が来た。上ノ神を今度は俺が滅ぼす」
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