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case 鬼 23

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私は大奥へと向かう守総の後に付いて行く。

守総の息子、桜雅は正室である桜華と共に暮らしているからだ。

帝の子どもは、12歳になるまでは、母親と共に大奥で暮らす。
12歳になると本殿に居を移し、帝王学を学び始めるらしい。

…鷹の扱いについてはそこから学ぶらしいのだが、桜雅は最近鷹について興味を持って、何度も守総は頼み込まれ、この前、鷹の扱いについて教えたとの事だった。桜雅はまだ8歳だ。

「やたらと、鷹について訪ねて来ていた。単なる動物好きかと思っていたが…まさか」

大奥に向かいながら、守総は苦しそうに顔を歪めた。自分の息子を疑いたくはなかっただろう。

「桜雅様が鷹を使ったとして…桜雅様ご自分の意思であったかどうかは、わかりませんし…」

「…確かに。だが、そうなると、桜雅が誰かに指示されていた事になる。それか…操られていたか…」

「!そんな術を使えるのは…妖怪ぐらいしか…」

「私は可能性を述べたまで。今回の事と、桜雅がどうしても私の中では結びつかない。誰かが裏に居るとしか…。それが人間なのか、妖怪なのか…」

…息子が自分の最愛である紫苑を苦しめている元凶だと思いたくない気持ちは良くわかる。

確かめなくては…。

正室、桜華の部屋の前に立つ。

声を掛け守総が部屋へ入り、暫くしてから、私も入室を促された。

そこには満面の笑みの桜華と、まだあどけなさの残る桜雅が居た。

「帝。よくぞお出で下さいました。桜華は嬉しゅうございます」

豪華な着物を着た桜華は黒く長い髪を携えた美人だ。
息子の桜雅も守総より桜華に似ている顔を綻ばせ、

「父上!僕もお会い出来て嬉しいです!」
と元気に挨拶した。

…会話から察するに、守総はあまり此処へは足を運んでいないように感じる。

「ああ。2人とも元気そうで何よりだ。ところで、桜雅。父はお前に訊ねたい事がある」

「何なりとご質問下さい!」

「最近…私の鷹の傍へ行ったか?」
そう守総が訊ねた途端、

「それは…うっ……」
と言って、桜雅が苦しみ始めた。

「桜雅!大丈夫ですか?!」
「桜雅!どうした!」
と桜華と守総はそろって慌てた。

傍に仕えている使用人に、守総は、

「医者を此処へすぐに連れて来い!直ぐにだ!」
と指示を飛ばす。

その間も、桜雅は苦しそうに喉元を押さえていた。さっきまであんなに元気そうだったのに…。
私も心配になり扉の近くから、3人の元へ少し近づいた途端、禍々しい気配に気づいた。

重苦しい気配が、桜雅の喉元と………桜華から感じられる。

これは、紫苑や他の鬼達から感じたあの呪いの気配と、とても良く似ている。

私は寒気がして、桜華の方を無意識に見ると、
桜華の口元は薄っすらと、弧を描いて、まるでそれは微笑んでいる様に見えた。

あぁ…。もしかすると…桜雅に指示をした人物が、わかったかもしれない。
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