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case 鬼 ⑳
しおりを挟む「安綱がここから無くなったとわかっていながら、探さなかったのか?お前だって、あの刀の恐ろしさを知っていただろう?それに、此処で守る事に異論はなかったんじゃないのか?」
と所長は嫌みを含んだように言った。
鬼道丸は、
「この島に無い物をどうやって探せというのだ?あの忌々しい結界のお陰で、外には出られん。まぁ、あの結界のお陰で安綱が奪われても、攻め込まれる事はないと高を括っておったが…間違いだった様だがな」
「鬼が数名、行方不明だと聞きました。心当たりは?」
私が訊ねると、
「これに侵されて死んだ鬼が居た。俺の手下だ。それの事だろう。紫電達には伏せておいた。そいつらは手厚く葬ったよ。病だと思っていたがな」
「封印が解けた時の事を聞きたいのですが…」
「あれは…3ヶ月程前だ。封印の気配が消えた。だからと言って、それを誰にも告げるつもりはなかった。
あの祠は見張りが居るし、アレには鬼は近づかん。鬼にとっては恐怖でしかないからな。
だから敢えて誰にも言わなかった。しかし…あれは持ち去られた。あれの気配がこの島から消えたのは、封印が解けて、数日の事だ」
鬼道丸は思い出すように目を閉じた。
「では持ち去られたのは、『封印が解けた後』なのですね?」
「あぁそうだ。間違いない」
…じゃあ、鬼でも安綱を触る事は可能だった訳だ。
持ち去った犯人の可能性がまた広がってしまった。でも、安綱は鬼にとっては『恐怖』の象徴…そんな物を鬼が持ち出すのだろうか?
「私達は、この呪いの術者を探します。呪いには安綱が関わっていると、私は考えています。
絶対に呪いを解いてみせます。…だから死なないで」
と私は鬼道丸を見てハッキリと口にした。
「俺もこんなもんでは死にたくないがな。…そんなお嬢ちゃんに1つ教えておこう。
あの安綱を使う為には、たくさんの犠牲が必要だ。もしかすると、この呪いはその為に鬼を犠牲にしとるんかもしれん。
この呪いは…俺達の妖力を枯渇させるのが狙いのようだが、その妖力をどこかに集めとるかもしれん。鬼の妖力は膨大だ。それを追え。
これは、俺の推測に過ぎん。お前達の話を聞いて思い付いたまで。信じるも信じんもお前達に任せる」
私達は鬼道丸の屋敷を後にした。
「ねぇ、祠の見張りをしていた鬼って、持ち去られた時どうしてたんだろ?」
その私の問いに兵六さんは、
「わしもそいつに話を聞きに行ったんじゃ。祠の裏で音がして、確認に行ったほんの僅かな隙を突いて持ち去られたようじゃ。しかし、怪しい人影は見なかったと言うておった」
うーん。誰が持ち去った?どうやって?
私が考え込んでいると、
「とりあえず、EDOに戻ろう。鬼道丸が言ってた様に、もし術者が妖力を集めているなら、その残滓を辿る事が出来るかもしれない」
所長の提案に私は頷いた。
そして、私は時間を確認しようとすまほを取り出して…
「あれ?ここではすまほ使えないんですね」
「あぁ。それは人間が作ったものだからな。ここは鬼の世界。だから俺は此処と連絡を取るのに、烏を使ってる。動物には結界は作用しないからな」
「ふーん。そうなんだ」
そう答えて、私はふと疑問に思う。
「所長、じゃあ、紫電さんは帝や紫苑さんとどうやって連絡を?」
私の疑問に代わりに答えてくれたのは、兵六さんだ。
「貞光と童子の時代から、2人は鷹を使っておった。今でも帝との連絡には鷹を使っておる。その鷹は帝…いや貞光の血を引くものしか使えん」
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