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case 鬼 ⑰
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雨月さんの案内で、私達は鬼切安綱が封印されてあった祠に辿り着いた。
「ここに安綱は封印され置かれておりました」
と雨月さんが指し示す場所には、刀掛台があるが、そこに刀は見当たらない。
そして、全くもってここには邪な気も残っていない。既に安綱が持ち去られてから3ヶ月も経っているからだろう。
「ここは、誰でも来る事は出来るのか?」
と所長は雨月さんに質問した。
「今は無人ですが、安綱があった時には見張りを付けておりました。それに、封印された安綱に、私達鬼が触る事は出来ません」
と雨月さんは答える。
ふと、
「鬼は触れなくても、人間なら触れるの?」
と私は疑問を口にした。
「さぁ…?普通の人間はわかりませんが、貞光は触れる事が出来たようです。ここに祠を建てたのは童子ですが、安綱を置いたのは貞光です。可能性として、貞光の子孫であれば出来るかもしれません。試した事はありませんが」
雨月さんが答える。
「それだと、帝になった者は封印された安綱に触れる事が出来る…かもしれないという事だな」
「所長、帝はここONIGASIMAに代替わりの際に来るらしいけど、それ以外では来ないって…」
と私が所長の言葉に答えていると、
「確かに歴代の帝は代替わりの際、童子への挨拶に訪れる以外はこの島に来る事は滅多にありませんが、今の帝…守総はそれ以外で2度、この島を訪れていますよ」
と雨月さんが私の話しに補足するように答えた。
「2度?いつ?」
「童子が亡くなった時と、紫苑様を迎えに来た時です」
…私は安綱を持ち出したのが、もしや守総なのではないかと疑ってしまったが…それでは時期が合わない。
所長に、
「お前、守総を疑ったか?」
と訊かれ私は素直に頷いた。
兵六さんは、
「確かに、この島に来る事が出来て、尚且つ封印された安綱に触れる事の出来る可能性のある人物じゃからなぁ、帝は。しかし、封印さえ失くなれば、鬼でも触れる事は可能じゃしな」
「でも、その時期をピンポイントで知る事が出来る人がいる?」
と私は口にした言葉に自分で答えを見つけた。
「いるじゃん、1人。封印がいつ解かれたか分かる人物」
と私が言うと、所長も、
「いるな、確かに」
と頷きながら、雨月さんに、
「鬼道丸は…どうしている?」
と訊いた。
雨月さんは、
「実は近頃姿を見ていません。下手な気を起こしていないか、紫電様が見張らせていますが、数週間前から姿を見せなくなったと」
そう答えた。
「鬼道丸がこの島を出る事は可能?」
と私は続けて質問するも、
「いえ。それは無理でしょう。確かに最近は結界に揺らぎが出ていますが、それでもここを出る事は難しいと思いますが」
雨月さんは首を振る。
「雨月さん。鬼道丸に会えますか?」
私の問いに、雨月さんは難しい顔をした。
「ここに安綱は封印され置かれておりました」
と雨月さんが指し示す場所には、刀掛台があるが、そこに刀は見当たらない。
そして、全くもってここには邪な気も残っていない。既に安綱が持ち去られてから3ヶ月も経っているからだろう。
「ここは、誰でも来る事は出来るのか?」
と所長は雨月さんに質問した。
「今は無人ですが、安綱があった時には見張りを付けておりました。それに、封印された安綱に、私達鬼が触る事は出来ません」
と雨月さんは答える。
ふと、
「鬼は触れなくても、人間なら触れるの?」
と私は疑問を口にした。
「さぁ…?普通の人間はわかりませんが、貞光は触れる事が出来たようです。ここに祠を建てたのは童子ですが、安綱を置いたのは貞光です。可能性として、貞光の子孫であれば出来るかもしれません。試した事はありませんが」
雨月さんが答える。
「それだと、帝になった者は封印された安綱に触れる事が出来る…かもしれないという事だな」
「所長、帝はここONIGASIMAに代替わりの際に来るらしいけど、それ以外では来ないって…」
と私が所長の言葉に答えていると、
「確かに歴代の帝は代替わりの際、童子への挨拶に訪れる以外はこの島に来る事は滅多にありませんが、今の帝…守総はそれ以外で2度、この島を訪れていますよ」
と雨月さんが私の話しに補足するように答えた。
「2度?いつ?」
「童子が亡くなった時と、紫苑様を迎えに来た時です」
…私は安綱を持ち出したのが、もしや守総なのではないかと疑ってしまったが…それでは時期が合わない。
所長に、
「お前、守総を疑ったか?」
と訊かれ私は素直に頷いた。
兵六さんは、
「確かに、この島に来る事が出来て、尚且つ封印された安綱に触れる事の出来る可能性のある人物じゃからなぁ、帝は。しかし、封印さえ失くなれば、鬼でも触れる事は可能じゃしな」
「でも、その時期をピンポイントで知る事が出来る人がいる?」
と私は口にした言葉に自分で答えを見つけた。
「いるじゃん、1人。封印がいつ解かれたか分かる人物」
と私が言うと、所長も、
「いるな、確かに」
と頷きながら、雨月さんに、
「鬼道丸は…どうしている?」
と訊いた。
雨月さんは、
「実は近頃姿を見ていません。下手な気を起こしていないか、紫電様が見張らせていますが、数週間前から姿を見せなくなったと」
そう答えた。
「鬼道丸がこの島を出る事は可能?」
と私は続けて質問するも、
「いえ。それは無理でしょう。確かに最近は結界に揺らぎが出ていますが、それでもここを出る事は難しいと思いますが」
雨月さんは首を振る。
「雨月さん。鬼道丸に会えますか?」
私の問いに、雨月さんは難しい顔をした。
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