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case 鬼 ⑯

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「呪いは術者が分からなければ、解くことが難しいのです。呪われる程の恨みを…買った覚えはありますか?」

「恨み…か。鬼が憎まれていたのは昔の事だが、その子孫が恨みに思う事はあるかもしれないな。しかし…それが何故今なのか?という疑問は残る」

今まで、私達の話を黙って聞いていた所長が口を開く。

「『今』というタイミングに意味があるとすれば…間違いなく『鬼切安綱』の封印が解かれた事と関係があるんだろうな」

…私もそれは考えていた。

「鬼切安綱の封印が解かれ、持ち出されたのはいつですか?」
と私が訊ねると、

「それに気付いたのは今から約3ヶ月程前だ」

「では、鬼達がこの呪いに蝕まれ始めたのは?」
今度は所長が訪ねた。

「最初の鬼が死んだのは…今から2ヶ月程前だろう。最初は原因不明の病だと思われていた。
その後、数人の鬼が同じ症状で死ぬと、これは感染症だと考えられるようになり、症状が出た者が隔離された。
しかし、今度は全く関り合いのない者にまで症状が出始めると、感染症じゃないんじゃないかと、ますます皆が混乱した。
結局は原因が何もわからないなら、騒いでも無駄だと、今はこの状況を受け入れている。
いや…諦めていると言った方が良いだろう」
紫電さんは目を伏せて、大きく息をついた。
話すだけでも辛いのではないだろうか。


「安綱が持ち去られた事を知っているのは?」
私が聞くと、

「その事を知っているのは、紫電の周りの限られた者達と…鬼道丸じゃ」
と辛そうな紫電さんに代わって兵六さんが答えてくれた。

「何故鬼道丸はそれを知ってる?紫電殿とは敵対しているのだろう?」
と所長は疑問を口にした。
それには、紫電さんが、

「安綱には酒呑童子の妖力が取り込まれている。鬼道丸は酒呑童子の息子。
安綱に何かあれば、あいつは気づく筈だ」
そう言うと紫電さんは頭を抱えるよう額に手を当てた。

「紫電、もう休め。後はわしが話をしておく」

そう兵六さんが言うと、紫電さんは頷き、雨月さんの手を借りて、部屋を出て行った。

私達は紫電さんを見送ると、

「この呪いと、鬼切安綱が関係しているのは間違いないな。タイミングがバッチリだ」
と所長は言う。私もそう思っていた。

「呪いには色んなタイプがあるけれど…もしかしたら、安綱はその媒体になってるのかもしれない」
と私は自分の考えを話し、

「鬼切安綱が封印されていた場所に行ってみよう。何か手がかりがあるかも」
と2人を見た。2人もそれに同意するように頷く。

すると、部屋に戻った雨月さんが、

「では、私がその場所へ案内いたしましょう」
と申し出てくれた。
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