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case 鬼 ④
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「兵六さーん。もうびっくりさせないでよ~。泥棒かと思ったじゃない!」
と私は怒りながら玄関で靴を脱ぐ。
私のその言葉に、
「ここに泥棒に入っても、泥棒の方が、がっかりするじゃろうよ」
と言って、兵六さんは笑う。
…あまりにも本当の事なので私は笑うに笑えない。
兵六さんは、既にお茶を飲みながら座っていた。
「で?何か用事があったんですよね?今日は所長、どっかに行って、帰って来ませんでしたよ?何処に行ったかは聞いてませんけど…伝言あれば伝えますけど?」
と私も自分のお茶を淹れながら、兵六さんの向い側に腰かけた。
「そうかい。八雲にも聞いて欲しかったんだが…まぁ、先に凛ちゃんに聞いて貰おうかな」
「ん?もしかして兵六さん、お仕事の依頼?初めてじゃない?」
兵六さんとの付き合いは結構長くなってきたが、依頼を受けた事はない。きっと、所長の情報屋みたいな事をしているのだと思っていたから、まさかお客になるとは思っていなかった。
「まぁ…そうだな。依頼と言えば依頼になるが…凛ちゃんは『鬼切』を知ってるかい?」
「『鬼切』って……『安綱』の事?」
「そうじゃ。読んで字の如く鬼を切れる刀じゃな」
「でも…その刀はもうこの世にはないって…大蔵の養父が言ってたわ」
「そう。もうこの世にはない…と言うか封印されたんじゃよ。鬼達がこの地より離れ、あの島で暮らす事を選んだ時にな」
あの島…それはONIGASIMA
鬼達はそこで鬼達だけの集落を作って暮らしている。
元々鬼は、人間に化ける事を苦手としていた。もちろん、出来る者もいたが、殆どの鬼がその姿を変化させる術を持たなかった。
そして…この鬼こそが1番人間に討伐された妖怪でもあるのだ。
まだこの国がNIHONになる前の話だが。
「で、その鬼切がどうかしたの?」
と私が訊ねると、兵六さんは、
「封印が解かれた…という噂がある」
「え?では…鬼切は?」
「もしかしたら、誰かの手に渡ってしまったかもしれんのじゃ」
「でも、噂…でしょう?」
「あぁ。だから、それが真実かどうか調べて欲しかったんじゃよ。八雲に」
「なんで、兵六さんがその鬼切の事…気にするの?」
「…約束したからじゃ。貞光とな」
…兵六さんの言ってる貞光って…上ノ神 貞光の事?
と私は怒りながら玄関で靴を脱ぐ。
私のその言葉に、
「ここに泥棒に入っても、泥棒の方が、がっかりするじゃろうよ」
と言って、兵六さんは笑う。
…あまりにも本当の事なので私は笑うに笑えない。
兵六さんは、既にお茶を飲みながら座っていた。
「で?何か用事があったんですよね?今日は所長、どっかに行って、帰って来ませんでしたよ?何処に行ったかは聞いてませんけど…伝言あれば伝えますけど?」
と私も自分のお茶を淹れながら、兵六さんの向い側に腰かけた。
「そうかい。八雲にも聞いて欲しかったんだが…まぁ、先に凛ちゃんに聞いて貰おうかな」
「ん?もしかして兵六さん、お仕事の依頼?初めてじゃない?」
兵六さんとの付き合いは結構長くなってきたが、依頼を受けた事はない。きっと、所長の情報屋みたいな事をしているのだと思っていたから、まさかお客になるとは思っていなかった。
「まぁ…そうだな。依頼と言えば依頼になるが…凛ちゃんは『鬼切』を知ってるかい?」
「『鬼切』って……『安綱』の事?」
「そうじゃ。読んで字の如く鬼を切れる刀じゃな」
「でも…その刀はもうこの世にはないって…大蔵の養父が言ってたわ」
「そう。もうこの世にはない…と言うか封印されたんじゃよ。鬼達がこの地より離れ、あの島で暮らす事を選んだ時にな」
あの島…それはONIGASIMA
鬼達はそこで鬼達だけの集落を作って暮らしている。
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そして…この鬼こそが1番人間に討伐された妖怪でもあるのだ。
まだこの国がNIHONになる前の話だが。
「で、その鬼切がどうかしたの?」
と私が訊ねると、兵六さんは、
「封印が解かれた…という噂がある」
「え?では…鬼切は?」
「もしかしたら、誰かの手に渡ってしまったかもしれんのじゃ」
「でも、噂…でしょう?」
「あぁ。だから、それが真実かどうか調べて欲しかったんじゃよ。八雲に」
「なんで、兵六さんがその鬼切の事…気にするの?」
「…約束したからじゃ。貞光とな」
…兵六さんの言ってる貞光って…上ノ神 貞光の事?
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