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case 鬼 ③

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「とにかく!依頼については引き受けられない。帰ってくれ」
と、所長が私の後ろで立ち上がる気配がした。

所長にそう言われた、帝…第728代皇帝  上ノ神 守総は、

「また来る」
と言って部屋を出て行った。

私は、その背中を見送ると、振り返ってどういう事かと所長の顔を見つめた。


所長は、

「お前は知らなくて良い。それに、この依頼は受けるつもりはない」
と珍しく真面目なトーンで言うと、立ち上がった。

「所長…何処に?」
と私が訊くと、

「ちょっとな」
と言って、言葉少なに、事務所を出ていった。

なんとなく、心がざわつく。
あんな所長を見たのはこの仕事を始めてから、記憶にない。


私は、事務所を片付けて、戸締まりをすると家路についた。

結局、所長はあのまま帰って来なかった。

アパートの部屋に向かいながら、私は今日来た帝… 上ノ神 守総の事を考えていた。

この国の誰もがその名前と姿を知る人物。
この国のトップだ。

戦いに明け暮れていたこの国の武将を纏め、国の礎を創り、1つの国に造り上げた人物、第1代皇帝 上ノ神  貞光の子孫だ。

上ノ神 貞光が、並みいる武将を押さえ付ける事が出来たのは、その類いまれなる強さのお陰なのだが、その強さにはある秘密があったとされている。
上ノ神 貞光は、鬼と人間のハーフ。所謂半妖であったのではないかと言う噂だ。
しかし、これを裏付ける証拠はない。
それほどの強さだったという事で、そう囁かれるようになっただけなのかもしれない。

そんな事を考えながら、自分のアパートに着いた。
私は鍵を取り出し鍵穴に差し込んで…え?鍵…開いてる?え?泥棒?

私は、そっと音をたてないように、ドアノブを回し、扉を少し開けて中を覗く。

 私だって、半妖とは言え、雪女の血を引いている。妖力を解放すれば、普通の人間よりは強いが、怖いものは怖い。

細く開けた隙間からは光が漏れている。誰か居る気配がする…この気配は妖怪だ。

どうしよう…妖怪なら、私も勝てるかわからない。妖怪の種類による。
私は、ここをそっと離れる選択をすると、扉を静かに閉めようとして…中から声が掛かった。

「凛ちゃんおかえり~。待ってたよ。事務所に行ったのに、誰もいなくて」

…この声。兵六さんだ…。私は思わず腰が抜けた。
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