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case 蟒蛇 ③

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「凛ちゃん、此処?」

私は辰巳さんを連れて、『珠緒の館』に来ていた。

あの後、辰巳さんに私の考えを話した。辰巳さんは恐縮して、

「そんな、申し訳ないよ。その…珠緒さん?にも悪いし」
と最初は断っていた。私がなんとか説得して、此処まで連れてきたのだ。

「うん。あくまで私の提案で、珠緒さんの返事は、辰巳さんを占ってからって事になってるから、あんまり期待はしないでね。でも、何にもしないで諦めちゃうの勿体無いから。所長も辰巳さんのお酒飲めなくなるの嘆いてたし」

あの日、所長は私に辰巳さんのお酒が飲めなくなる事をめちゃくちゃ悲しそうに語った。

私は辰巳さんと『珠緒の館』の扉を開いた。

「じゃあ、辰巳さん?だっけ。そこの椅子に腰かけて貰えますか?」
と珠緒さんが自分の前のテーブルは挟んだ向かいの椅子に辰巳さんを案内した。

珠緒さんの前には古ぼけた鏡が置いてある。
これを使って未来を視るのだ。

カチンコチンになった辰巳さんに、

「そんな緊張しなくても、取って食べたりしないから、安心して。じゃあ…少し貴方の未来を視させてもらうわね…」
と珠緒さんは苦笑混じりで言葉にすると、じっと目の前の鏡を見ていた。

私は、部屋の隅に立っている。
丁度、辰巳さんの斜め後ろ。
私から、珠緒さんの顔が見える。
すると、鏡を見ている珠緒さんの顔が、何故か赤く染まっていく。
?どうしたんだろう?
珠緒さんは、何故か両手で口を覆い、信じられないものを見たような顔をしている。
何が視えているのか。
その様子に、珠緒さんに向かい合っている辰巳さんも困惑しているようだ。

ふと、珠緒さんが目の前の辰巳さんを見て、更に顔を赤くした。

不安になった辰巳さんは、

「あ、あの…何か…ありましたか?」
と恐る恐る珠緒さんに訊ねる。

占い中の珠緒さんに声を掛けて良いのかわからなくて、でもどうすれば良いのかわからなくて、辰巳さんは、声を掛けた後、じっと珠緒さんを見つめていた。

その声に珠緒さんは、

「は?あ、あぁ。あ、あの…その…、この土地…この城だった土地は、ひ、広くて…その、無駄に広くて…だから、あ、貴方の酒蔵を建てる事に何の問題もありません。あの…どうぞ、お使い下さい」

と珠緒さんはしどろもどろになりながら、辰巳さんに告げた。

「じゃあ、ここを借りても良いんですね?」
と辰巳さんは嬉しそうだ。

「はい。あ、あの賃料は要りません。建物を建てるだけでも、貴方は借金をしなくてはならないのでしょう?」

「は、はい。お恥ずかしい話ですが、蓄えも殆んどないもんですから。でも、そんな甘える訳には…」
と、辰巳さんは頭を掻く。

「賃料については、貴方の仕事が軌道に乗ったら…考えます。それまでは、甘えて頂いて大丈夫です」

結局、辰巳さんは珠緒さんの言葉に甘える事にした。
さて、早速これから、ここに酒蔵を建てる準備をしなければならない。

今は珠緒さんも普段の様子と変わりなく見えるが…さっきの珠緒さん、なんか変だったよね?と私は思わず首を傾げた。
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