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case 刑部姫 ②

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此処はHIMEJI。

私は珠緒さんの職場である『珠緒の館』に着いた。
いつ見ても珠緒さんのネーミングセンス…。

「こんにちはー!〈よろず屋〉です!」
と私は建物に入って行く。

すると、珠緒さんが、

「あ、凛ちゃん!ごめんね~。また頼まれてくれる?」
と言って2匹の犬を連れてきた。

この2匹、名前は『イー』と『ヌー』
珠緒さんのネーミングセンス…。

この『珠緒の館』は、珠緒さんの職場兼住まい。
元々棲んでいた城の老朽化に伴い占いが出来る店舗付住宅に改築したのだ。

大きすぎる城は掃除も大変なので、昔に比べて随分と小さくしたのよ?と珠緒さんは笑う。

この城の城主は人間だった。もちろん何百年も前に亡くなっている。
珠緒さんは、その人を愛していたと思う。
城主には正室も側室も居たけれど。

はっきりと珠緒さんから、そう聞かされたわけではないが、珠緒さんはその人の事を話す時、凄く幸せそうな顔をする。

人間を愛した妖怪は辛く悲しい。
愛しい人の死を乗り越えなければならないから。
嫌でも置いて逝かれてしまうから。
父を亡くした私にも、その気持ちは理解出来る。

私は、

「毎度ありがとうございます!もう最近全然仕事なくって…また給料未払いの憂き目にあう所だったんで、助かります!」
と言ってイーとヌーのリードを預かった。

珠緒さんは、

「たまには、山歩きをさせたいけど、ほら…私は此処から離れられないでしょう?ここの庭で自由にさせてるけどそれだけじゃ、2匹もストレス溜まっちゃうからね」

刑部姫はこの城に祀られているので、此処から離れると力を失ってしまう。

ほんの少しなら大丈夫だが、長く此処を離れる事が出来ない。その為に私が時々、代わりに2匹を散歩するのだ。

2匹は『送り犬』なので、山歩きが好きだ。
私は、2匹を連れて山を目指した。

山を歩きながら、イーとヌーに話しかける。

「珠緒さん、最近忙しそうだねぇ。イーもヌーも珠緒さんを癒してあげてね」

珠緒さんは、時々、とても寂しそうな目をする。きっと、昔の彼を思い出しているんだと思う。

ここの山はハイキングコースにもなっている程歩きやすい。
私も、イーもヌーも、妖怪なだけあって、体力には自信ありだ。

さくさくと1人と2匹で歩いていると、少し前に1人の子どもがキョロキョロしながら歩いているのが見えた。
(…迷子かな?)
そう思っていると、突然、その子どもが転けてしまった。

(!!!不味い!この2匹の前で転けてしまうなんて!)

と私が思うと同時に、2匹は走り出した。私はリードを引き2匹を止めようとするも、凄い力で私を引っ張って行く。

『送り犬』の前で転けてはいけない。
もし何かの拍子で転んでしまうとたちまち食い殺されてしまうから。
昔からそう言われていた。

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