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case 刑部姫 ①

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「…暇ですね…」
私は、あまりに暇すぎて、欠伸が止まらず涙目になりながら、所長に言う。

所長は、

「あーそうだなぁ。こんな日もあったって良いだろう?」 
と呑気に言うが、

が1日なら、それはまぁ、そうですけど…ここ3日間、全く依頼が無いんですよ?ヤバイですって!」
と私は悲壮感を漂わせる。

そんな時、私のが鳴った。

「あ、はーい!分かりました!直ぐにお伺いいたします!」
と私が電話を切る。

「あーぁ。凛、仕事かぁ?」
…欠伸しながら、言わないで欲しい。

「はい。珠緒さんのペットの散歩です!」
と私が言うと、

「まーたあの2匹かぁ?」
と所長は嫌そうだ。

「そうですよ。珠緒さん、最近とっても忙しいみたいですよ。昨日も番組に出演されてましたもん」
と私は答える。

珠緒さんは、刑部姫だ。仕事は占い師。

刑部姫は昔は城主にその城の運命を年に1回告げに現れる妖怪だったが、珠緒さんの評判を聞いて色んな企業の社長さんや、会長さんが占いに訪れるようになって、今や色んな媒体に引っ張りだこの有名占い師だ。


「俺は、犬が苦手だからなぁ。その依頼は任せた!」

…今までだって、全部私がお世話をしていたじゃないか。改めて言われるまでもない。

そこへ、

「こんにちはー。お久しぶりです」
と現れたのは、蟒蛇である辰巳さんだ。

所長は嬉しそうに、

「お!待ってたよ~。今年の出来はどうだい?」
と手を揉みながら、辰巳さんに近付く。
目は辰巳の持つ酒瓶に釘付けだ。

辰巳さんは、

「今年は米の品質も良かったから、かなり美味しいのが出来上がったよ。自信作だ!」
とニコニコ顔で、その酒瓶を所長に手渡した。

所長はその酒瓶に頬擦りしながら、

「そりゃ~楽しみだ」
と言って、早速酒盛りを始めそうな勢いだ。

私は、

「所長!まだ真っ昼間ですよ!それに今は仕事中です。ダメですよ!」
と私が止めるも、

「客なんて来やしないさ。もう店じまい!店じまい!」
そう所長が言うと、私の背後から、

「さぁ、早速飲もうかね~」
といつの間にやら、兵六さんが立っていた。

「兵六さん…だから勝手に入らないで下さいって何度も…」
と私が苦い顔で告げるも、

「凛ちゃん、固いことは言いっこ無しだ。
辰巳さんの酒をワシもずっと待ってたんだからさ」
と言いながら、兵六さんは、所長が用意した湯呑みに酒を注いでもらっている。

2人は私の制止なんてどこ吹く風。
早速長椅子に座ると酒盛りを始めてしまった。

それを見た辰巳さんは、

「凛ちゃん…なんかごめんよ」
と頭を掻きながら謝った。

「辰巳さんのせいじゃないよ。もうこうなったら、仕事になんないから、辰巳さんも一緒に飲んでったら?
私は今から仕事に行ってくるからさ」

と私は言って、事務所の扉に『close』の札を下げて珠緒さんの職場に向かった。
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