なんでも相談所〈よろず屋〉で御座います！～ただしお客様は妖怪に限る～

case 桂男 ⑤

ただ、ぬらりひょんは勝手に家に入るのだが、その家の主みたいな顔をしているので、誰もそれを不思議に思わず、追い出す事もしない。
なので、色んな家庭の様々な情報を知っていた。

たまにこうして、所長に情報を流してるみたいだが、詳細は知らない。所長は私に教えてくれないので、私も敢えて訊く事はしない。

「じゃあ、八重乃さんの借金をどうやって返すか…一路と話し合って来ます」
と私が言うと、所長は、

「凛。一路を連れて来い。俺に考えがある」
そう言うと、所長は兵六さんと一緒に出て行こうとする。

「へ？所長何処に行くんですか？」
と私が訊ねると、

「ちょっとな。ちゃんと事務所閉めて行けよ？」
と私に声を掛けながらも出て行った。

…店番しろよ。


私が一路に付けた印が指し示す場所に、私は向かう。

（……………デート中かな）
おしゃれなかふぇに、一路は地味な感じの女性と一緒に入って行った。

もしや新しいカモなのか…。

もうこれ以上被害者を増やしたくはないが、本気の恋人だった場合、ただのお邪魔虫だ。

私は、出直すつもりで、かふぇから離れようとすると、後ろから肩を捕まれ、思わず声を上げそうになる。

なんとか、声を耐え後ろを振り返ると、私の肩を掴んだまま、にこやかな顔で立っているのは、一路だ。

「一路…デート中でしょう？かふぇに戻って？」
そう私は言うのだが、

「凛、私に会いに来てくれたんだよね？なら、もうあの女はいいや」
と真面目な顔で私に告げる。

私は、

「ダメだよ。ちゃんと戻って。一路の良い所は女性に優しい所なんだから。私はちゃんと待ってるから」

そう言うと、

「わかった。ちゃんと待っててね。それと…凛、私の良い所はそれだけじゃないよ」
とニッコリ笑う。

「ん？一路の良い所？どこだろう？顔？」

「凛、酷いなぁ。確かに私は顔が良いけどね。もし、私の良い所を知りたくなったら、いつでも言って。嫌と言う程、わからせてあげるから」
と妖艶に微笑む一路に、何故か背筋が寒くなる。

「さぁ、ほら早く戻って。私は通りの向こうの、書店で時間を潰しておくから」
と、私は一路の背中を押すと、私も書店へ向かった。

私が書店で色んな本を手に取りながら過ごすこと、約30分。一路は私の元へ訪れた。

「ごめん。待たせたね」
一路は軽く私に謝ると、

「で、これからどうする？凛はご飯食べた？何か食べに行く？」
と、少しウキウキした様子で、次の予定を訊く。

色んな女性が、一路の美しさに、皆、振り返る。これだけ顔が良ければ、女が寄って来るのは仕方ない。

「一路、とりあえず今から私達はうちの店に行くから」
と私がこれからの予定を言うと、一路は思いっきり顔を顰めた。