4 / 55
case 桂男 ①
しおりを挟む
今日の依頼人は、少し地味な感じの女の人だ。いや人と言っても妖怪なんだけど。
その女性は切羽詰まった感じで、
「私のお金を返して欲しいの!」
と私に訴える。
「では、まず話を整理させて頂きますね。貴女が彼に出会ったのは、およそ半年前。お間違えないですね?」
「はい」
「で、その彼のお母さんが病気だから、お金を融通してくれと言われて、お金を貸したと」
「そう。でも、結婚する約束をしていたし、そうなれば、その人は私のお義母さんになるわけでしょう?だから、当然だと思ったの」
私と依頼人の話を聞いていた所長は、
「はぁ…そりゃ、結婚詐欺だな」
と身も蓋もない言い方をする。
私だってそう思ったけど、もう少しオブラートに包んだ言い方をするつもりだったのに。
それを聞いた女性はしくしくと泣き出した。
あーあ。泣かせた。私は、振り返り後ろでふんぞり返っている所長を睨む。
「とにかく、その男性のお名前と、顔写真あります?」
と私が訊ねると、女性は、
「名前は…柊。でも、顔写真は…こんなのしかなくて」
とその女性が見せてくれた写真は、少しピントの甘い、少し遠い横顔だった。
「これは…?」
と私が不思議そうな顔をすると、
「彼、写真が嫌いだって言って、一緒に撮ったりしてくれなかったんです。でも、私はどうしても彼の写真が欲しくて…」
きっと、その男性に気付かれないように、コッソリ撮った写真だったのだろう。
ピントは甘いが、その男性の端正な顔立ちはしっかりと分かる。かなりのイケメンだ。
………この顔に見覚えあり…だ。
私はその事を悟られないように、
「では、この写真をこちらで保存させて頂いてもよろしいですか?」
と言って、その写真データを転送して貰った。
「では、まず、この男性を探し出す作業から始めさせて頂きます。
今回、少しお時間の掛かる依頼となりますので…手付金としてこの辺りで如何でしょう?」
とざっと見積もった金額を女性に提示する。
その女性…八重乃さんは頷いた。契約成立だ。
八重乃さんを見送った後、早速私は、さっき転送された写真データを拡大して、所長に見せる。
所長はその写真を見るなり、
「また、こいつかよ…」
と溜め息をついた。
その女性は切羽詰まった感じで、
「私のお金を返して欲しいの!」
と私に訴える。
「では、まず話を整理させて頂きますね。貴女が彼に出会ったのは、およそ半年前。お間違えないですね?」
「はい」
「で、その彼のお母さんが病気だから、お金を融通してくれと言われて、お金を貸したと」
「そう。でも、結婚する約束をしていたし、そうなれば、その人は私のお義母さんになるわけでしょう?だから、当然だと思ったの」
私と依頼人の話を聞いていた所長は、
「はぁ…そりゃ、結婚詐欺だな」
と身も蓋もない言い方をする。
私だってそう思ったけど、もう少しオブラートに包んだ言い方をするつもりだったのに。
それを聞いた女性はしくしくと泣き出した。
あーあ。泣かせた。私は、振り返り後ろでふんぞり返っている所長を睨む。
「とにかく、その男性のお名前と、顔写真あります?」
と私が訊ねると、女性は、
「名前は…柊。でも、顔写真は…こんなのしかなくて」
とその女性が見せてくれた写真は、少しピントの甘い、少し遠い横顔だった。
「これは…?」
と私が不思議そうな顔をすると、
「彼、写真が嫌いだって言って、一緒に撮ったりしてくれなかったんです。でも、私はどうしても彼の写真が欲しくて…」
きっと、その男性に気付かれないように、コッソリ撮った写真だったのだろう。
ピントは甘いが、その男性の端正な顔立ちはしっかりと分かる。かなりのイケメンだ。
………この顔に見覚えあり…だ。
私はその事を悟られないように、
「では、この写真をこちらで保存させて頂いてもよろしいですか?」
と言って、その写真データを転送して貰った。
「では、まず、この男性を探し出す作業から始めさせて頂きます。
今回、少しお時間の掛かる依頼となりますので…手付金としてこの辺りで如何でしょう?」
とざっと見積もった金額を女性に提示する。
その女性…八重乃さんは頷いた。契約成立だ。
八重乃さんを見送った後、早速私は、さっき転送された写真データを拡大して、所長に見せる。
所長はその写真を見るなり、
「また、こいつかよ…」
と溜め息をついた。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
皇太后(おかあ)様におまかせ!〜皇帝陛下の純愛探し〜
菰野るり
キャラ文芸
皇帝陛下はお年頃。
まわりは縁談を持ってくるが、どんな美人にもなびかない。
なんでも、3年前に一度だけ出逢った忘れられない女性がいるのだとか。手がかりはなし。そんな中、皇太后は自ら街に出て息子の嫁探しをすることに!
この物語の皇太后の名は雲泪(ユンレイ)、皇帝の名は堯舜(ヤオシュン)です。つまり【後宮物語〜身代わり宮女は皇帝陛下に溺愛されます⁉︎〜】の続編です。しかし、こちらから読んでも楽しめます‼︎どちらから読んでも違う感覚で楽しめる⁉︎こちらはポジティブなラブコメです。
AIアイドル活動日誌
ジャン・幸田
キャラ文芸
AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!
そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。
あやかし警察おとり捜査課
紫音
キャラ文芸
※第7回キャラ文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。
【あらすじ】
二十三歳にして童顔・低身長で小中学生に見間違われる青年・栗丘みつきは、出世の見込みのない落ちこぼれ警察官。
しかしその小さな身に秘められた身体能力と、この世ならざるもの(=あやかし)を認知する霊視能力を買われた彼は、あやかし退治を主とする部署・特例災害対策室に任命され、あやかしを誘き寄せるための囮捜査に挑む。
反りが合わない年下エリートの相棒と、狐面を被った怪しい上司と共に繰り広げる退魔ファンタジー。
便利屋ブルーヘブン、営業中。~そのお困りごと、大天狗と鬼が解決します~
卯崎瑛珠
キャラ文芸
とあるノスタルジックなアーケード商店街にある、小さな便利屋『ブルーヘブン』。
店主の天さんは、実は天狗だ。
もちろん人間のふりをして生きているが、なぜか問題を抱えた人々が、吸い寄せられるようにやってくる。
「どんな依頼も、断らないのがモットーだからな」と言いつつ、今日も誰かを救うのだ。
神通力に、羽団扇。高下駄に……時々伸びる鼻。
仲間にも、実は大妖怪がいたりして。
コワモテ大天狗、妖怪チート!?で、世直しにいざ参らん!
(あ、いえ、ただの便利屋です。)
-----------------------------
ほっこり・じんわり大賞奨励賞作品です。
カクヨムとノベプラにも掲載しています。
諦めて溺愛されてください~皇帝陛下の湯たんぽ係やってます~
七瀬京
キャラ文芸
庶民中の庶民、王宮の洗濯係のリリアは、ある日皇帝陛下の『湯たんぽ』係に任命される。
冷酷無比極まりないと評判の皇帝陛下と毎晩同衾するだけの簡単なお仕事だが、皇帝陛下は妙にリリアを気に入ってしまい……??
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
あやかし狐の身代わり花嫁
シアノ
キャラ文芸
第4回キャラ文芸大賞あやかし賞受賞作。
2024年2月15日書下ろし3巻を刊行しました!
親を亡くしたばかりの小春は、ある日、迷い込んだ黒松の林で美しい狐の嫁入りを目撃する。ところが、人間の小春を見咎めた花嫁が怒りだし、突如破談になってしまった。慌てて逃げ帰った小春だけれど、そこには厄介な親戚と――狐の花婿がいて? 尾崎玄湖と名乗った男は、借金を盾に身売りを迫る親戚から助ける代わりに、三ヶ月だけ小春に玄湖の妻のフリをするよう提案してくるが……!? 妖だらけの不思議な屋敷で、かりそめ夫婦が紡ぎ合う優しくて切ない想いの行方とは――
エンジニア(精製士)の憂鬱
蒼衣翼
キャラ文芸
「俺の夢は人を感動させることの出来るおもちゃを作ること」そう豪語する木村隆志(きむらたかし)26才。
彼は現在中堅家電メーカーに務めるサラリーマンだ。
しかして、その血統は、人類救世のために生まれた一族である。
想いが怪異を産み出す世界で、男は使命を捨てて、夢を選んだ。……選んだはずだった。
だが、一人の女性を救ったことから彼の運命は大きく変わり始める。
愛する女性、逃れられない運命、捨てられない夢を全て抱えて苦悩しながらも前に進む、とある勇者(ヒーロー)の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる