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case 砂かけ婆 ③

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私は朝から、おミツさんの住まいのある山へ入る。

確かに、山には至るところに空のペットボトルや、お菓子の空袋、割り箸や紙皿などが散乱していた。
最近はが流行りだ。

をする老若男女のお陰で、そういうグッズを扱うお店は大繁盛だというが、これはその弊害か。

きっと、きちんとルールを守っている人もたくさん居るはずなのだが、ほんの少しでもルールを守らない人が居る事で、そちらの方に焦点が当たって悪目立ちしてしまうのだ。

さて、まずはゴミ拾いだ。
私が首から下げた笛を吹くとそこに100羽近くの烏が集まって来た。

「今日は、この山のゴミ拾いよ!よろしくね。
おミツさんの家の周りを中心に!
燃えるゴミはこの袋、ペットボトルはこの袋、燃えないゴミはこの袋に入れてね。では、解散!」
と私が烏達に言えば、烏は一斉に思い思いの場所へ飛び立って行った。

私も自らゴミ拾いを始める。

数時間もすると、私の持ってきたゴミ袋が数十個は一杯になった。

私は、

「もうこれで終わりにしよう!ゴミはこの前と同じで買い取り業者がやって来るから、ここに置いておいてね。今日もありがとう!」
と私は烏達にお礼を言うと烏達はまた自分達の根城に帰って行った。

あとで報酬を支払わなければならない。
と言っても彼らにはお金ではなく食料だが。


私はを取り出すと、いつもお世話になってるゴミの買い取り業者に連絡した。

大まかな分別をしておけば、後は向こうでやってくれる。

先日は、海坊主の依頼で海の掃除をしたのだが、流石にその時は烏を使えず、自分でやる羽目になったので、かなり時間がかかってしまった。

ちなみに、所長はこういう肉体労働を伴う依頼には一切手を貸してくれない。

今日も事務所で悠々と昼寝でもしている事だろう。


私はその後、おミツさんの家の周りに『ゴミは持ち帰りましょう』の看板を立てていく。
これがどれ程の効果をもたらすかはわからないが、無いよりマシだろう。


私はおミツさんに仕事が終了した事を伝え、報酬を頂いた。
その後、少しどうかい?と言われておミツさんの家でお茶をご馳走になる。

「今日はありがとうね。これで、少しは綺麗な砂が取れると良いんだけどね」
とおミツさんは言う。

「人間はどうしても集団になると、気持ちが大きくなっちまう。
1人がゴミを捨て、また他の1人がゴミを捨て…悪い事でも1人じゃないと安心して、真似しちまうもんさ。
まぁ、賑やかなのは、嬉しいがね」

おミツさんは、お茶を飲みながらそう言った。



私が事務所に戻ると、案の定所長は長椅子の上で居眠りをしていた。

肉体労働の後にその穏やかな寝顔を見ると無性に腹が立つ。
私は思いっきり鼻を摘まむ。
人間に化けている時には長くはないが、天狗にとって鼻は弱点だ。

所長は直ぐ様飛び起きて、私の姿を認めると、

「おかえり」
と言って、私の頭を撫でた。
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