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番外編
番外編・その49
しおりを挟む子どもの様にマルコ様の腕の中で眠った私は、翌朝、少し朝寝坊をしてしまった。
昨日の出来事は思いの外、私をかなり疲弊させていた様だ。
マルコ様は眠い目を擦って起きた私に、眩しい程の笑顔で『おはよう』と言ってくれた。
大きな秘密を打ち明けた後でも、マルコ様は変わらない。そんな彼に感謝しかなかった。私も笑顔で『おはよう』と返す。
1番の幸せを感じる瞬間だ。
私とマルコ様は朝食を食べる為に食堂へ向かう。
扉を開いた瞬間にジュリエッタが私に抱きついて来た……ビックリし過ぎて固まる私に、
「お姉様、ありがとう。私に気遣って下さったのでしょう?」
と涙を流してジュリエッタは礼を言った。
後ろから、ゴールドマン伯爵がゆっくりと近付き、泣いているジュリエッタの肩に手を置いた。
ジュリエッタは涙に濡れた顔を上げ、伯爵に振り返ると、そのまま今度は伯爵に抱きついた。
伯爵はそんなジュリエッタの頭を愛しそうに撫でながら、
「実は昨日、ジュリエッタがお義父様の様子がおかしい事に気づいて……結局お話を聞いたのです。お義父様は言い渋っていましたが、ジュリエッタがどうしてもと。責めないであげて下さい」
と伯爵は私に言った。
「そうでしたか……。少し…お話をしましょうか?朝食が少し不味く感じてしまうかもしれませんけど」
と私が言えば、涙も渇かぬジュリエッタが、
「うちの料理長の腕はピカ一だから、どんな話題の中で食べてもきっと美味しい筈よ」
と私に少しだけ微笑んだ。
そんなジュリエッタと私にマルコ様は、
「さぁ!どちらにしても料理が冷めてしまっては台無しだ。早速、皆で頂こう」
と言うと、私を連れてテーブルへと促した。
ジュリエッタは伯爵に手を引かれている。
父とナラが居ない。私が口を開こうとすると、
「お父様、少し熱があるの。心配する程ではないと言っていたのだけど、大事をとって朝食はお部屋に運ばせたわ」
とゴールドマン伯爵から受け取ったハンカチで涙を拭いたジュリエッタが言った。
父も昨日の事で疲れてしまったのだろう。
最近元気にしていたので、すっかり失念していたが、父は生死をさまよったのだ。これ以上、あまり無理はさせない方が良いだろう。
私達4人が食卓につき、朝食が始まる。
食事が半分程進んだところで、私はおもむろに口を開いた。
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