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番外編
番外編・その45
しおりを挟む馬車の中で私は祈る。
無事だとは聞いていても、皆の顔を見るまでは安心出来ずに居た。
馬車がオーヴェル家に近づく。もっと騒々しいのではないかと想像していたのに、何故か不気味な程静かだ。
私は不安に飲み込まれそうになる心に喝を入れる。しっかりしろクロエ!
馬車が屋敷に到着すると、私は御者が扉を開けるのを待てずに、自ら馬車の扉を開けて急いで外に出た。
警備隊は?賊はもう連れて行かれたのだろうか?
屋敷の門番が、
「クロエ様!お早いお帰りですね。マルコ様より、もう少し遅くなるとお聞きしておりましたが…」
と驚いた顔をした。
私が、
「そんな事より…」
と門番に話を聞こうとした時、
「クロエ?!なんだ…早かったな」
とマルコ様が屋敷から外に出て来た。馬車を見て、驚いたのだろう。
「ナラが気を利かせてくれたの。でもまだ賊の事は話してないわ。参列者にも家族の誰にもバレていないから大丈夫」
と私がマルコ様に駆け寄りながら言うと、
「そうか…。まぁ…良かったよ。クロエの意見を聞きたかったからな」
と私を出迎えると、そう言った。
私はマルコ様と玄関へと向かう。
マルコ様は私に、
「賊はもう警備隊へと引き渡した。ただ…」
と少し言葉を濁す。
「ただ…?何?」
私が不安げに訊ねると、
「うん…。まぁ、見てもらった方が早い」
とマルコ様に言われる。
扉を開いて待つのはうちの執事だ。その顔色は少し悪いが、どこにも怪我をしている様子はない。
私は玄関ホールに足を踏み入れる。
ザッと見渡すが、特に変わった様子はない。
「大丈夫だった?皆も無事?」
私が早口にそう執事に訊ねると、
「使用人も含め皆、無事に御座います。あぁ…庭師が少し怪我をしましたが、大した怪我ではありません。相手も雑魚でしたから」
と彼は答えた。
「雑魚…。でも、我が屋敷に入り込んだのは事実なのでしょう?そんな…どうやって?」
と私が眉を潜めると、
「それは俺から話すよ。先ずは…こっちに」
とマルコ様が私の肩に手を置いて、そっと応接室の方へと私を誘導していった。
応接室?何故かしら?
私が疑問を口にする前に、
「応接室は勿体無いと思ったんだが、床に転がしておく訳にもいかないからな…」
とマルコ様は言いながら、到着した応接室の前に居た護衛の2人に頷いて見せた。
護衛は私を見て、微妙そうな顔をしながら、応接室の扉を開ける。
そこには………安っぽいワンピースを着て、手を後ろで縛られた、元母親が不貞腐れたような顔で、長椅子に腰かけていた。
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