婚約解消された私はお飾り王妃になりました。でも推しに癒されているので大丈夫です!

初瀬 叶

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番外編

番外編・その39

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「お姉さまの出産と私の結婚式、どちらが早いのかしら?」
ジュリエッタが私の大きくなったお腹を見ながらそう言った。

「多分、私の出産が早いと思うのだけど、重なる事だけは避けたいわ」
私がお茶を飲みながらそう言うと、

「そんなの自分でどうにか出来る訳じゃないでしょう?」
とジュリエッタは笑った。

「確かにそうだけど、神様に毎日祈ってるわ。後は気合いね」

「…お姉さまなら、気合いで何とかしそうなのが怖いわ。
私はドレスの補正も済んだし、お姉さまの顔も見たから、明日には修道院へ戻るつもりよ」
ジュリエッタがお茶のカップを置きながらそう言って私を見て微笑んだ。

この娘もこんな表情が出来るようになったのだと、感慨深くなる。

「もう少しゆっくりしていけば良いのに。お父様もジュリエッタが居た方が嬉しそうよ?」
と私が言えば、ジュリエッタの表情は少し曇った。

「…あの女に似た私の顔など、見たくないと言われるのではないかと怖かったわ」
とジュリエッタは俯いた。

「そんな事、ある訳ないじゃない。ジュリエッタはお父様にとって、誰より大切な娘よ?
…あぁ…嫌味ではないの。今は私の事も大切に思って下さっているのは理解しているから。
でも、ジュリエッタ…『馬鹿な子ほど、可愛い』と言うでしょう?」
と私がからかうように言えば、

「もう!お姉さまったら!私が馬鹿だと言いたいのね?!…って自分でもそれは否定出来ないわ」
とジュリエッタも笑う。

こんな穏やかな時間が私達に訪れるとは…数年前には考えられなかった。

そしてすっかり成長したジュリエッタは翌日、修道院へと戻って行った。

『これでも私、歳下の子ども達の面倒をみているのよ?私が長く留守にすると、皆が寂しがるわ』
と少し得意そうな顔をしたジュリエッタは、やはり可愛らしかった。


その夜、マルコ様から、

「これ、クロエに…と」
と手紙を差し出された。

「これは…」
その手紙の差出人は、私の元母親の兄である、アントン伯爵からだった。

私はその手紙を取り出して、急いで読む。

「マルコ…貴方これ…」
と私が手紙をマルコ様にも読んで貰う為に差し出すと、

「手紙は読んでないが、概要はそれを届けてくれた者から聞いた。気を付ける様に…と」
とマルコ様は私が差し出した手紙に急いで目を通した。

その手紙には、元母なる者が失踪したと書いてあった。
私や…オーヴェル家を恨んでいたので、身辺に気を付けて欲しいと。

マルコ様は静かに、

「実は…妊娠中のクロエや結婚式を控えたジュリエッタを動揺させたくなくて、黙っていたが、最近、良くない噂を耳にしていたんだ」
と私に告げる。

「良くない噂?」

「あぁ。クロエの元…母親が、良くない連中と接触してるらしい…と」
とマルコ様は真面目な顔で私にそう言うのだった。

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