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番外編

番外編・その21

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私が屋敷へ戻ると執事から、

「この前、頼まれていた調べものの結果報告書が届いております」
と声をかけられた。

しかし、マルコ様は

「今日はもう遅い。仕事は明日に」
と執事に声をかける。執事も、

「畏まりました。今日はごゆっくりとお休み下さい」
と下がっていく。

私が、

「書類見るぐらい出来るのに…」
と言えば、

「うちの奥さんは働き過ぎ。急がなくても結果は変わらないんだから」
とマルコ様は苦笑した。

「自分だって、ブドウ園の事…今日纏めるつもりだったくせに」
と私が言えば、マルコ様は、

「…俺もすっかり仕事人間って事か。
よし!俺も今日は休むよ。
上に立つ者が休まなければ、下の者も休み難い。俺たちが肝に命じておかなきゃダメな事だな」
と言うと、私を抱き上げて、

「さて、ゆっくり休もう」
と私に口付けた。

「…ゆっくり休めない予感がするけど」
と私が言えば、

「なら、奥さんの期待に答えなきゃな」
とそのまま私を寝室へと連れて行った。



翌朝、私は自分の執務室で執事に言われた報告書を読んで驚いていた。


「ヴィンセント・ゴールドマン伯爵…面白い人ね。これはお父様に確認しなくてはいけなくなってしまったわ」
と私が笑う。

…お父様は何て仰るかしらね。

執事に、

「今日はお父様、お時間あるかしら?」
と私が言えば、

「確認して参ります」
と執事は部屋を出て言った。




「失礼します」
とその日の午後、父の寝室へと私は足を運んだ。

父は車椅子に乗って、私を出迎えた。後ろにはナラが付き添っている。

「お前が私に話とは、珍しいな」
と言う父の向かいに椅子が用意されている。
そこへ腰かけろと言う事だろう。


「単刀直入にお伺いしますわ。お父様『ヴィンセント・ゴールドマン伯爵』をご存知?」

「もちろん。あまり王都には顔を出さんが、良い鉱山を持っている。無口だが誠実な男だ」

「では『レインマン』という画家は?」
そう訊ねる私に、父は、

「…調べたのか…」
と微笑んだ。

「ええ。実はゴールドマン伯爵からジュリエッタへと釣書が届きましたの」
と私が言えば父は驚いて、

「なに?!あの男が?…そ、そうか…」
と何やら考え込んだ。

私は父のその反応を見て、

「お父様が伯爵に頼んだ事なのではないのですか?」
と疑問を口にした。

てっきり、この縁談は父が仕組んだものだと思っていたからだ。

「いや…頼んだつもりはなかったのだが…」
と歯切れが悪い父。

すると、ナラが、

「正直にお話すれば良いのですよ。悪いことをした訳じゃないんですから」
と笑顔で父にそう言った。

ナラもゴールドマン伯爵の正体を知っているようだ。
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