55 / 86
番外編
番外編・その20
しおりを挟む「ジュリエッタはどうだった?」
とマルコ様に話しかけられ、私は窓から視線を外して、彼を見た。
さっきからずっとジュリエッタの事を考えていた。
彼女は彼女で家族の中の立ち位置を理解していたという訳だ。
父からの愛情のみで、自分はオーヴェル家で頂点に居れるのだと。
何度も私に『オーヴェル家を継げば良い』と言っていたのだって、もしかしたら本当にオーヴェル家と離れて自分が安心出来る家族を作りたかったのかもしれない。
父は間違いなくジュリエッタより早く亡くなる。それが不安だったのだろう。
今のジュリエッタには修道院が居場所なのだ。
私が君臨しているオーヴェル家には戻りたくない…そう考えるのも理解出来る。
「別人だったわ」
と私は答えた。
「別人?そんなに変わってた?」
「ええ。あれは演技だと思えないから…彼女も自分の立場をやっと理解できたみたいだわ。
でも、あのまま家に居ては、ああは変われなかったでしょうね。院長には感謝しかないわね」
「母親の事…何か言ってた?」
「憎しみしかないみたいだったわ。父を捨てた彼女に家族の情は持てないみたいよ。
と言うより、彼女の家族は父だけだったみたい。元々…母親には愛情が無かったのかも…」
と私が言えば、
「可愛がられていたんじゃないのか?母親にも」
と少し驚いたようにマルコ様は私に質問した。
「私もそう思っていたけど、ジュリエッタはそう感じてなかったみたいね。
母がジュリエッタに興味を持っていなかったのをジュリエッタ自身も感じていたんだわ」
母親は私やジュリエッタの事を、自分を彩るアクセサリーの1つと考えていた。
私に厳しくしていたのは、王子の婚約者になれるチャンスがあったから。
ジュリエッタに甘かったのは、早々に彼女を見限っていただけだったのかもしれない。
「罪深い人だな。君の母親も…っと元母親か。
ところで、ジュリエッタはこれからどうしたいと?」
私は面会でジュリエッタが話していた事を、マルコ様に説明した。
「じゃあ…あと1年修道院に?」
と言うマルコ様の問いに、
「いえ…あと2年。彼女が成人するまで…と院長にお願いしてきたの。その後は…どこかに嫁がせるつもりだけど…どこにするかよねぇ…」
と私は思わずため息をついた。
「ジュリエッタはどこにでも嫁ぐと言ってるんだろ?」
「ええ。だからと言って、私は本気でスケベじじいの所とか、一癖も二癖もあるような人物に嫁がせる気はないわよ?」
と私が言えば、
「わかってるよ。クロエは何だかんだで優しいからな。嫌いな妹だとしでもみすみす不幸にするような選択をしないだろ」
とマルコ様は笑った。
前のように我が儘なジュリエッタなら、それも考えなくはない私が居る。
私はそんなに優しくはないのだが、ここは誤解させたままにしておこう。
81
お気に入りに追加
8,080
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。