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番外編

番外編・その20

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「ジュリエッタはどうだった?」
とマルコ様に話しかけられ、私は窓から視線を外して、彼を見た。

さっきからずっとジュリエッタの事を考えていた。

彼女は彼女で家族の中の立ち位置を理解していたという訳だ。
父からの愛情のみで、自分はオーヴェル家で頂点に居れるのだと。

何度も私に『オーヴェル家を継げば良い』と言っていたのだって、もしかしたら本当にオーヴェル家と離れて自分が安心出来る家族を作りたかったのかもしれない。
父は間違いなくジュリエッタより早く亡くなる。それが不安だったのだろう。

今のジュリエッタには修道院が居場所なのだ。
私が君臨しているオーヴェル家には戻りたくない…そう考えるのも理解出来る。


「別人だったわ」
と私は答えた。

「別人?そんなに変わってた?」

「ええ。あれは演技だと思えないから…彼女も自分の立場をやっと理解できたみたいだわ。
でも、あのまま家に居ては、ああは変われなかったでしょうね。院長には感謝しかないわね」


「母親の事…何か言ってた?」


「憎しみしかないみたいだったわ。父を捨てた彼女に家族の情は持てないみたいよ。
と言うより、彼女の家族は父だけだったみたい。元々…母親には愛情が無かったのかも…」
と私が言えば、

「可愛がられていたんじゃないのか?母親にも」
と少し驚いたようにマルコ様は私に質問した。


「私もそう思っていたけど、ジュリエッタはそう感じてなかったみたいね。
母がジュリエッタに興味を持っていなかったのをジュリエッタ自身も感じていたんだわ」

母親は私やジュリエッタの事を、自分を彩るアクセサリーの1つと考えていた。

私に厳しくしていたのは、王子の婚約者になれるチャンスがあったから。
ジュリエッタに甘かったのは、早々に彼女を見限っていただけだったのかもしれない。


「罪深い人だな。君の母親も…っと元母親か。
ところで、ジュリエッタはこれからどうしたいと?」

私は面会でジュリエッタが話していた事を、マルコ様に説明した。

「じゃあ…あと1年修道院に?」
と言うマルコ様の問いに、

「いえ…あと2年。彼女が成人するまで…と院長にお願いしてきたの。その後は…どこかに嫁がせるつもりだけど…どこにするかよねぇ…」
と私は思わずため息をついた。

「ジュリエッタはどこにでも嫁ぐと言ってるんだろ?」

「ええ。だからと言って、私は本気でスケベじじいの所とか、一癖も二癖もあるような人物に嫁がせる気はないわよ?」
と私が言えば、

「わかってるよ。クロエは何だかんだで優しいからな。嫌いな妹だとしでもみすみす不幸にするような選択をしないだろ」
とマルコ様は笑った。

前のように我が儘なジュリエッタなら、それも考えなくはない私が居る。

私はそんなに優しくはないのだが、ここは誤解させたままにしておこう。
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